『オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由ー』その2

その2:

1:
「笛を吹く少年」続き

1-1:
ケンカ小僧(笑)または軍楽隊の少年が率いるのは、勿論、後の「印象派」と呼ばれる一派。

1-2:
また、主題に使った人物は「少年」。
大人ではありません。
成長と新しさの象徴です。
つまり、サロンと言う権威である「老人」に対抗するのに相応しいのは、やはり「少年」。

1-3:
ところで、この絵を見ている時、他の人がどこを見ているかも観察しました。
絵の底、足元に注目している人は皆無。
特に音声解説を聞いている人は視線を下に向けることもありませんでした。

1-4:
あーでもない、こーでもない、と考え、近付いたり離れたり、見ている人々を観察したりして、
気が付けば小一時間経ってました(笑)。
それ位心と視線を捉え離さない、釘付け絵画です(^.^)。


2:
展示番号8
ジャン=フランソワ・ミレー
「晩鐘」
世界で最も敬虔な絵画の一つ。
労働と収穫への感謝。
今日も一日無事に終わった事への感謝。
「足ることを知る」の一枚。

大変穏やかな絵で、キリスト教や宗教が与える心の安息を実感させる一枚。

でも、ミレーより後の時代の人間が見ると、
「あ~、滅びゆく写実絵画とサロンへの鎮魂の祈りかぁ」


3:
展示番号16
ギュスターヴ・カイユボット
「床に鉋をかける人々」

ブリジストン美術館でやった回顧展に来なかった代表作。
(参考、私の記事→http://cypresshushizen.blog.fc2.com/blog-entry-1559.html)
この人の写実の腕前は、やはり大したものです。
床に散らばる鉋屑、これが実に見事。
近くで見ると細密に描いてないのがよく分かりますが、少し離れてみるとこれが丸まった鉋屑に見えるんだなぁ…

画面右端には、フランス人らし飲みかけの赤ワインのボトルが一本とグラスが一個。

この絵も私の胸に響くものが無かった(涙)。


4:
展示番号21
ジャン=レオン・ジェローム
「エルサレム」

キリストの磔刑後、ゴルゴダの丘を去る人を風景の一部にした風景画。
キリスト初め3人の磔刑者は直接描かず影のみ。
この影は中々良いですね。


5:
展示番号22
エルネスト・メッソニエ
「フランス遠征 1814年」

冬、雪でぬかるんだ道を進む騎馬の一行。
『大草原の小さな家』シリーズでも出るぬかるんだ道が凍るとどうなるか、それがよく分かる道。
馬の蹄でこねくり回された泥道は凍るとその通りの形の「個体」になり、「こんな所歩けねぇよ」。
ヨーロッパで石畳の舗装が開発されたのは冬場の交通困難を解消するため。


6:
展示番号27
ギュスターヴ・モロー
「イアソン」

私が唯一知っているギリシャ神話の中の一つ(笑)。
ギリシャ神話のアルゴの勇者達を引き連れた「アルゴ探検隊」のイアーソーンです。
(「アルゴナウタイ」、参考→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%BF%E3%82%A4)
(『アルゴ探検隊の大冒険』の記事、参考→http://cypresshushizen.blog.fc2.com/blog-entry-869.html)

ゴールデン・フリース(金羊裘)も描かれていますが、金色の毛皮が無い(笑)。
イアーソーンの足が踏んづけてるのは、怪鳥ハルピュイアイ。
お隣の美女はメーディア。
ふむふむ、これだけのものが揃う場面と言うと…
コルキスでイアーソーンがメーディアの助けを借りて金羊裘を手に入れた場面か、
ハルピュイアイ以外はね(笑)。


7:
有名どころ

7-1:
展示番号32
クロード・モネ
「かささぎ」
光に反射する雪の描写や降り積もった雪の重さを想像させる描写は見事なんですが、
重さを表しているためか明るい色ばかり使っているのに、
絵の印象が重い。
根雪ですよ、この絵。
日本画なら、余白を活かし所々に胡粉の白を使って強調し、全体に軽い新雪の感じになるでしょうね。

7-2:
展示番号47
アルフレッド・シスレー
「洪水のなかの小舟、ポール=マルリー」

『美の巨人たち』でやったから知った(笑)。
(参考→http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/080510/index.html)

7-3:
展示番号78
クロード・モネ
「サン=ラザール駅」

これも『美の巨人たち』でやったけど、その前から知ってました。
(参考→http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/130406/index.html)
いかにも印象派らしい形がハッキリしない描写。
もやもや、もわもわした絵ですが、実物は意外とキレイです。


8:
展示番号53
アンリ・ファンタン=ラトゥール
「花瓶のキク」

これも驚いた。
あの強烈な「笛を吹く少年」を見た後でも印象が強い。
この絵、何と、油彩なのにキクの花が浮かび上がり、立体的に見える(@_@)。

近付いて観察すると、全体的には薄塗りですが、
中央の白いキクは細かく絵具を重ね細密に描いています。
特に中心付近の5個だけ他の色を入れてない白を使い、油も艶が出る油を使ってます。
白い花の後、中景に当るエンジの花は軽めの、あっさり描写。

これだけ筆致を変えれば少々は全体に立体感を与えるでしょう。
でも、それだけではなさそう。
では、何か?
分からん(笑)。


9:
まとめ

名画が多く、お得感が一杯でした。
それでも、展示番号1で最初に展示されている「笛を吹く少年」が断トツの出来。
他の作品を完全に凌駕、圧倒。

ミレーの「晩鐘」とマネの「笛を吹く少年」を同時に見られる展覧会なんて、日本では、おそらく、今回が最初で最後。
絵画好きな方、行くことをお勧めします。
人出以外は(笑)、絶対後悔しないはずです。
心が「お腹一杯」になること間違い無し(^.^)。




タグ オルセー美術館




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『オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由ー』その1

★簡単な紹介

2014年7月9日(水)~10月20日(月)
国立新美術館
HP→http://orsay2014.jp/index.html



1:
すんげ~有名な印象派の絵と同時代のすんげ~有名な写実絵画がてんこ盛りの展覧会。

で、一番気になるのは、込み具合、少なくとも私はね(笑)。
入場待ちはまぁ、許せますが、中が込み過ぎて絵を見にくいのは嫌い(笑)。


7月19日土曜日の午前11時前に行くと…
入場待ち時間0秒
入場待ち行列0㎜
やった~(^.^)。

中はどうかと言うと…
そこはまぁ、洋画の中でも日本人が大好きな印象派。
決して空いてるとは言えません。
入った直後は混雑になれず、やはり家を出るのが1時間遅かったと、いつもの(笑)後悔(笑)。
でも、5分も中にいると、まぁ、許せる程度なのが分かってきまして。

有名どころも5分も経つと人波が途切れる時があり、近くで筆致や細かい描写を思う存分観察出来ます。

こんな感じで見て回ると…


2:
入口から凄かった。

展示番号1 「笛を吹く少年」
エドゥアール・マネ

中に入ると光り輝く大判の縦長。
、と言っても畳とほぼ同じ。
印象派の中でも有名どころの一枚で40年以上前から知ってます。
でも、別に好きでもなんでもありませんでした。

ところが、本物を見たら、驚天動地(@_@)。
すんげ~んだ、絵が放つ雰囲気と魅力が(@_@)。
オマケに保存状態がとてもいい。

2-1:
見ている人が少々多かったんで、会場を一回りして戻ると人が減り、遠目から見ると、
まず、色々な対比が強い。

背景のベージュと少年の鮮やかな色使い。
少年のジャケットの黒とズボンの赤。
少年の顔の輝きとジャケットと帽子の黒。
ズボンの赤とストライプの黒。
笛の黒と初年の顔の色。
ジャケットの黒とサッシュの白。
靴の黒と脚絆の白。
等々。

2-2:
色使いは対比が強く、少年の体の骨格(?)は、縦にジグザグ状にしています。
また、体を三角形、それも3辺の長さが全て違う不等辺三角形の組み合わせにしています。
いくつか挙げると、

笛と頭。(→右手の中指を立て画面左側の斜辺を強調しています)
笛と右脇の筒とジェケット右側。
右脇の筒と左脚、筒と帽子の頂点が作る線。
両脚の間と左右の靴の踵。
右足と左脚と絵の底辺


葛飾北斎の構図を真似したんではないでしょう?
また、黒澤明の『羅生門』での3人の登場人物が作る不安定な構図の方は、
この「笛を吹く少年」を真似したか触発されたのではないでしょうか?

2-2:
この三角形の組み合わせ、積木の様です。
しかし、安定してるとは決して言えない組み合わせです。
不安定と言うよりも、不安感を感じるという方が近い。
際どいバランスを保っている積木、って感じです。
二等辺三角形や正三角形が在りません。

この不安感が一番顕著なのが、一番下、底に在る

靴と絵の底が作る三角形。

そして、ここに絵を理解する鍵が在りました。
両方の靴の踵を結ぶ線上に在る濃い色。
左脚の影と捉えるのも可能ですが、背景の描き方を考えると非常に不自然です。
違和感全開。
影ではなく、「左右の靴の踵を結ぶ線を強調している色」と捉えるのが一番無理が無いでしょう。

右の靴から延長する線は絵の角へ向かいますが、
左の靴から延長する線は角へ向かわず底辺の途中へ向かいます。

この絵は安定を求めていません。
こう捉えて間違いありません。

2-3:
さて、この不安感と笛を吹く少年を組み合わせると、どうなるでしょう?
「安定感=動かない」ですから、
椅子に座るか、立ったまま演奏するオーケストラではありません。
不安感が在る構図と言う事は、動きを想像させる力が在ると言う事です。

つ、ま、り、
この少年、歩き始めようとしているんです。
歩く楽器使いと言えば、軍楽隊ですな。

2-4:
また、この絵にはもう一つ非常に不自然な点が在ります。
それは、笛を持つ両手。
一見すると輪郭線の様な指の線を強調する色使いの様ですが、よく見るとどうも違います。
陰影としても、指の肌の色と違いが大き過ぎます。
そうなると、残りの解釈は一つ。

指が汚れているんです。

何か、不自然です。

2-5:
対比の強さ。
不安感を与える構図。
歩きだしそうな少年。
笛を吹く少年。
指が汚れた少年。
軍楽隊。

これらを組み合わせると、
軍隊の先触れの登場です。
どんな軍隊か?
指が汚れている人々。
サロンと対比する労働者階級の人々です。

つまり、サロンと言う権威主義に対する宣戦布告なんです。
サロンにケンカを売っているんです(@_@)。

マネのサロンに対する挑戦と自信を表した作品です。

2-6:
これ位優れた、いい絵ですが、ん~、イマイチ心を動かされません。
非常に力強く、訴える力も魅力も有る絵なんですがねぇ…
まぁ、好みの絵じゃない、って事なんです(笑)。



タグ オルセー美術館 マネ 新国立美術館



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好きな監督は黒澤明と張藝謀。
気になる監督は堤幸彦。
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