国立西洋美術館蔵、ジュルジュ・ドゥ・ラ・トゥール筆『聖トマス』と『クラーナハ展ー500年後の誘惑』

★簡単な紹介

2016年10月15日(土)~2017年1月15日(日)

国立西洋美術館

HP→http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2016cranach.html

TBSのHP→http://www.tbs.co.jp/vienna2016/


これまた大昔、中学生か小学校高学年の頃から知ってる絵師。
当時は「クラーナハ」じゃなくて「クラナッハ」だった。


1:
作品番号:82
「マルティン・ルター」

作品番号:85
「マルティン・ルターとカタリナ・フォン・ボラ」

私にとってクラーナハと言えばルター。
そうそう、この2枚の絵です。
帽子を被ってるのと被ってないの。
実物を見て分かったのが、小さい事、小さい事(@_@)。
会場で無料で配布している目録に大きさが書いてないので正確な数値は不明ですが、
日本の画材の大きさだと、6号Fか4号F位です。

改めて見ると、マルティン・ルター、英語訛りならマーティン・ルーサー、
私が愛する鹿島アントラーズに多大な貢献をしたジーコだ(笑)。

ただ、この2枚、それだけ。
なんの感興も起こさず。


2:
残りの絵も退屈。
聖書とギリシャ神話と金持ちの絵だけ。
平板で職人の絵ばかり。


3:
そんな中で、同時代の同国と言う事なんでしょうが、
デューラーの銅版画、エングレイヴィングが出展されていました。

作品番号:17
「騎士と死と悪魔」

作品番号:90
「メレンコリア I」

5月に町田の国際版画美術館で見て以来。
改めて見ると、絵が漂わす雰囲気がクラーナハとは段違い。
「騎士と死と悪魔」は前回気付かなかった魅力爆発(笑)。
町田で私はクロード・メランの「聖顔」に完璧に撃破されてましたナ(笑)。

この展覧会、クラーナハの本邦初の回顧展なんですが、
主役はデューラーでクラーナハが引き立て役になってます。
オマケにデューラーの版画は31cm×26cmと更に小さい。


4:
デューラーと同様にクラーナハを吹き飛ばし、ブチ破った絵が常設展にありました。

ジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥール
聖トマス

参考、国立西洋美術館のHP→https://www.nmwa.go.jp/jp/collection/2003-0002.html

4-1:
この絵を見る前に見ていたのが、ヤーコプ・ファン・ロイスダールを初めとした17世紀オランダ絵画。
この頃のオランダの風景画は、全体に褐色なんですな。
だから、遠目からも、「お、オランダの風景画だ」と分かります。
はい、今回も(笑)。

江戸前期以前から日本画の植物画や風景画の植物は緑青を使い文字通り「緑滴る」なんですが、
同じ頃のオランダの森はロイスダール初め褐色がかった緑なんです。
どう見ても美しくない。
自然観の違いは間違い無く、当時の欧州人にとっては自然は親しいものでもなく近しいものでもなかったのでしょう。
敵対するものだったのでしょう。
日本人にとっても単純に近しいだけのもでなかったのは、
長谷川等伯の「松林図屏風」や「竹鶴図屏風」を見れば厳しいものであったのも分かります。
それでも、日本人にとっては一線を画すものでなかったのは確かです。

、とこんな事を考えながら見ていて、ふと絵の前から離れ振り返ると、
何と、
光り輝く絵が1枚ある(@_@)。
それも、ロイスダールと同じく褐色しか使ってない、
明度は高いけど。
オマケに一目で分かる有名な作品。

4-2:
構成と表現について。

色は褐色を中心にまとめてあります。
槍を右上⇔左下の斜線に使い、
頭を画面上、左に傾げ左上⇔右下の斜線に使い構図の中心にしています。
槍は直線なので、右上⇔左下の線はこれだけ。
左上⇔右下の実際の線が無くこれだけだは弱くバランスが取れないので、頭が作る斜線と平行する斜線をつくってます。
それが、画面上から、
右肩⇔白い布⇔左手
右腕上腕⇔右手
の斜線を作ってます。

光が当るのは、
両手、禿頭(=とくとう)、両肩に掛けた布(→コートかも)、槍。
両手、頭、槍は画面上の斜線を作り、両肩に掛けた布は垂直線を作ってます。
両手、頭、槍が表わすのは当然信仰心を表し、一方、布は画面のバランスと安定感を与えてます。

その他、線、三角形で大きさと色のバランスを取ってますが、文字で説明するのは分かりにくいのでパス(笑)。
それでも一つだけ書くと、画面左端の縦長の影が構成上とても巧く、バランスが非常にいい。
見ていて気持ち良くなる構成の良さです。

また、上記のHPの写真では分からないのですが、両手の指をエドゥワール・モネの「笛を吹く少年」と同じく汚しています。
なぜ?
「笛を吹く少年」は労働者階級を表していますが、聖トマスは、イエスの教えを説く「種まく人」です。
仏教なら雲龍図ですね。
種をまく人なら農夫ですから、両手の指が汚れていて当然です。

4-3:
さて、
強い赤とか使ってないし、明度が高いとは言え使ってるのは褐色で地味。
それでも視線と心を捉えて離さない雰囲気を漂わせています。
光の当たる部分(槍、両手、頭)を強調し、暗闇で際立たせていますが、
地味な物を着て、槍を持った単なるジジィの絵(笑)なんです。
それでも、カラヴァッジョと同じく非常に「強い」絵です。

よく見ていると、カラヴァッジョの「エッケ・ホモ」みたいに3D風の飛び出す絵でも、
鈴木其一の「夏秋渓流図屏風」の渓流の様に動きがある絵でもありません。

人間の視覚は動きに敏感だし、私の経験では心の方も実際に動きが無い絵でも動きを感じられると捉えられます。
しかし、この「聖トマス」は動きも動きを想像させる描写もありません。
それでも、視線と心を捉えます。
何か、強固で動かないモノがあります。
何か、なぜか?

よく見ると分かってきました。
これまた、上記HPでは分からないんですが、槍の裏側に槍と直交する線があります。
画面上、その左端には光を当て、強調しているのが分かります。
何でしょう?
十字架と捉えて間違いありません。

そう、信仰心を雰囲気で表している、と捉えて間違いありません。
揺るぐことない、「動かない」強固な信仰心を表しているのです。
殉教する事も厭わない信仰心です。
この敬虔な信仰心と言うのは日本人には分かりにくく、私CYPRESSも日本人なので分かりにくい。
聖トマス」を見ると、想像の手掛かりくらいは掴めた気がします。

キリスト教絵画の真髄ではないでしょうか?
「信念に殉ずる」、西欧の考え方と生き方に改めて触れ圧倒されました。






タグ ラ・トゥール カラヴァッジョ 聖トマス 鈴木其一 マネ






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『オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由ー』その1

★簡単な紹介

2014年7月9日(水)~10月20日(月)
国立新美術館
HP→http://orsay2014.jp/index.html



1:
すんげ~有名な印象派の絵と同時代のすんげ~有名な写実絵画がてんこ盛りの展覧会。

で、一番気になるのは、込み具合、少なくとも私はね(笑)。
入場待ちはまぁ、許せますが、中が込み過ぎて絵を見にくいのは嫌い(笑)。


7月19日土曜日の午前11時前に行くと…
入場待ち時間0秒
入場待ち行列0㎜
やった~(^.^)。

中はどうかと言うと…
そこはまぁ、洋画の中でも日本人が大好きな印象派。
決して空いてるとは言えません。
入った直後は混雑になれず、やはり家を出るのが1時間遅かったと、いつもの(笑)後悔(笑)。
でも、5分も中にいると、まぁ、許せる程度なのが分かってきまして。

有名どころも5分も経つと人波が途切れる時があり、近くで筆致や細かい描写を思う存分観察出来ます。

こんな感じで見て回ると…


2:
入口から凄かった。

展示番号1 「笛を吹く少年」
エドゥアール・マネ

中に入ると光り輝く大判の縦長。
、と言っても畳とほぼ同じ。
印象派の中でも有名どころの一枚で40年以上前から知ってます。
でも、別に好きでもなんでもありませんでした。

ところが、本物を見たら、驚天動地(@_@)。
すんげ~んだ、絵が放つ雰囲気と魅力が(@_@)。
オマケに保存状態がとてもいい。

2-1:
見ている人が少々多かったんで、会場を一回りして戻ると人が減り、遠目から見ると、
まず、色々な対比が強い。

背景のベージュと少年の鮮やかな色使い。
少年のジャケットの黒とズボンの赤。
少年の顔の輝きとジャケットと帽子の黒。
ズボンの赤とストライプの黒。
笛の黒と初年の顔の色。
ジャケットの黒とサッシュの白。
靴の黒と脚絆の白。
等々。

2-2:
色使いは対比が強く、少年の体の骨格(?)は、縦にジグザグ状にしています。
また、体を三角形、それも3辺の長さが全て違う不等辺三角形の組み合わせにしています。
いくつか挙げると、

笛と頭。(→右手の中指を立て画面左側の斜辺を強調しています)
笛と右脇の筒とジェケット右側。
右脇の筒と左脚、筒と帽子の頂点が作る線。
両脚の間と左右の靴の踵。
右足と左脚と絵の底辺


葛飾北斎の構図を真似したんではないでしょう?
また、黒澤明の『羅生門』での3人の登場人物が作る不安定な構図の方は、
この「笛を吹く少年」を真似したか触発されたのではないでしょうか?

2-2:
この三角形の組み合わせ、積木の様です。
しかし、安定してるとは決して言えない組み合わせです。
不安定と言うよりも、不安感を感じるという方が近い。
際どいバランスを保っている積木、って感じです。
二等辺三角形や正三角形が在りません。

この不安感が一番顕著なのが、一番下、底に在る

靴と絵の底が作る三角形。

そして、ここに絵を理解する鍵が在りました。
両方の靴の踵を結ぶ線上に在る濃い色。
左脚の影と捉えるのも可能ですが、背景の描き方を考えると非常に不自然です。
違和感全開。
影ではなく、「左右の靴の踵を結ぶ線を強調している色」と捉えるのが一番無理が無いでしょう。

右の靴から延長する線は絵の角へ向かいますが、
左の靴から延長する線は角へ向かわず底辺の途中へ向かいます。

この絵は安定を求めていません。
こう捉えて間違いありません。

2-3:
さて、この不安感と笛を吹く少年を組み合わせると、どうなるでしょう?
「安定感=動かない」ですから、
椅子に座るか、立ったまま演奏するオーケストラではありません。
不安感が在る構図と言う事は、動きを想像させる力が在ると言う事です。

つ、ま、り、
この少年、歩き始めようとしているんです。
歩く楽器使いと言えば、軍楽隊ですな。

2-4:
また、この絵にはもう一つ非常に不自然な点が在ります。
それは、笛を持つ両手。
一見すると輪郭線の様な指の線を強調する色使いの様ですが、よく見るとどうも違います。
陰影としても、指の肌の色と違いが大き過ぎます。
そうなると、残りの解釈は一つ。

指が汚れているんです。

何か、不自然です。

2-5:
対比の強さ。
不安感を与える構図。
歩きだしそうな少年。
笛を吹く少年。
指が汚れた少年。
軍楽隊。

これらを組み合わせると、
軍隊の先触れの登場です。
どんな軍隊か?
指が汚れている人々。
サロンと対比する労働者階級の人々です。

つまり、サロンと言う権威主義に対する宣戦布告なんです。
サロンにケンカを売っているんです(@_@)。

マネのサロンに対する挑戦と自信を表した作品です。

2-6:
これ位優れた、いい絵ですが、ん~、イマイチ心を動かされません。
非常に力強く、訴える力も魅力も有る絵なんですがねぇ…
まぁ、好みの絵じゃない、って事なんです(笑)。



タグ オルセー美術館 マネ 新国立美術館



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最近好きな女優は杉村春子と中谷美紀。
好きな監督は黒澤明と張藝謀。
気になる監督は堤幸彦。
山田孝之の実力が分かってきました。

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