『歌川広重 ~東海道五十三次と冨士三十六景』 後期その1

★簡単な紹介

太田記念美術館

前期:2016年4月29日(金・祝日)~5月26日(木)
後期:6月1日(水)~6月26日(日)

HP→http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/utagawa-hiroshige


後期展も行ってきました。
JR原宿駅表参道口から行く時は、
GAPの前の信号を渡ると、直ぐ先の「銀だこ」の角を曲がり裏道を進むと人通りが少なく、好ましい。
途中には世界で唯一のハッセルブラッドの直営店があります。

表参道を進み、太田記念美術館の看板があるソフトバンクと千疋屋の角まで行くのは、人間があまりにも多過ぎお勧めしません。


1:
東海道五十三次

図版はWikiにあるので参考に
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E9%81%93%E4%BA%94%E5%8D%81%E4%B8%89%E6%AC%A1_(%E6%B5%AE%E4%B8%96%E7%B5%B5)

今回は後半、27番目の袋井宿から。
全体に、前半と違い穏やかです。
鈴鹿峠がありますが、標高357m。
箱根峠は、846m。
単純に標高を比べても鈴鹿峠は箱根の半分以下。
こりゃ、楽だワ。
小田原⇔箱根⇔三島みたいな絵が作られんハズだわい。


1-1:
四十五番  庄野

副題で「白雨」が付けられている一枚。
にわか雨、夕立の意で雨が白く見える雨。
白く見えるとは、かなりの強い雨です。

斜線しかない驚異の絵。
峠道、強風で傾く竹林、風と雨を避け体を傾ける人々、家々の三角形の茅葺き屋根、強風に流される雨脚、等々。
全てが斜線(@_@)。
白人には考え付くこともない構図。
斜線を中心にした構図の絵はいくらでもありますが、
実際に斜線だけを描いた絵は、まずありません。

保栄堂版の本物を見るのは今回が初めて。
最近の復刻版と比べると、雨が薄い、弱い。
と言っても「薄め」、「弱め」です。
名所江戸百景の「おおはしあたけの夕立」と比べると、雨の表現はかなり弱い。

なぜ?

この先に待ち受ける鈴鹿峠の標高の低さですな。
箱根峠の半分だから、「白雨」と言ってもこの程度なんです。

成程、広重、流石、よく考えてるワイ(^.^)。

1-2:
四十三番目  四日市

これは、右端の合羽を着た人がいいんだなぁ(^.^)。
風になびく合羽の描写がとても巧い、いい(^.^)。
画面右側の風に飛ばされた笠を追い掛ける旅人が注目されている様ですが、
イマイチ目立ちません。
代わりに右側さん(笑)は、笠と合羽を黄色(石黄(せきおう))で強調しています。

1-3:
四十八番目  坂下

画面左側筆捨山の表現が最高(^.^)。
箱根と同じ様な表現ですが、いつまでも見ていたい(笑)。
箱根と違い生物じみた不気味さがなく、箱根と違う場所だと示しています。
急峻さはないし、峠道も傾斜が緩い。

そして、
落款と題名を入れる位置の絶妙な事(^.^)。
絵と全く関係の無いこう言う物を描き加え絵のバランスを取るとは…(^.^)。
日本の芸術家の素晴らしさであります(^.^)。

1-4:
その他

悪い絵はありません。
前期に展示され私が文句を書いた「第十九番 府中」でも他の絵から比べると出来の悪さが目立つだけです。
「お気に入りの絵をどうぞ、堪能して下さい」
この手の出来のいい作品しかありません。
流石、広重、素晴らしい。


2:
まとめ

とにかくハズレが無いのが天保4年、1833年から出された保栄堂版東海道五十三次』。
今回ハッキリ分かりました。

遠景だけを描いた絵が無く、近景、中景、遠景を組み合わせています。
この点が『富士三十六景』と完全に違う点で、親近感や現実感が全く違います。
『富士三十六景』はどうもよそよそしいんです。

『名所江戸百景』では近像型で強烈な構図と構成の凄い作品が多いですが、
東海道五十三次』ではありません。
木を画面中央付近に置いて画面を壊しそうな絵が『東海道五十三次』でも多く、
この点は『名所江戸百景』と同じです。
主な絵は、
「十六番 由比」、「二十七番 袋井」、「二十八番 見附」(ここでは舟竿)、「二十九番 浜松」、「三十七番 藤川」(ここでは棒杭)、「五十番 水口」
です。
その他にも木を中央付近に置いている作品もありますが、近景に置かなかったり、垂直に描かず近景の他の部分に溶け込ませています。
画面を半分にして力を弱めるのでこの手の構図は禁じ手と美術の教科書には書いてありますが、
力を弱めない技を持ってるのが広重です。
時代を考えると北斎の『富嶽三十六景』(甲州 三嶌越)の方が先で広重が参考にしたとも考えられますが、どうなんでしょうか?

まぁ、とにかく、ハズレ無し。
見ていて楽しい作品ばかりです(^.^)。
世界最高の絵画の一つです(^.^)。





タグ 広重 太田記念美術館 東海道五十三次 保栄堂版 北斎




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『歌川広重 ~東海道五十三次と冨士三十六景』 前期その2

2-3:
良い絵

出来のいいのが多い。
「江戸名所百景」は興の乗り具合の差が激しい。
「六十余州名所図会」はどうもやる気になっていません。

2-3-1:
第十三番  原

富士山が枠線を突き破ってどっか~ん(笑)。
富士山の高さを強調し、面白い表現です。

2-3-2:
第十五番  蒲原

突如現れるほぼ白黒、墨絵の世界。
これは目に新鮮。
雪の表現は決して悪くありませんが、川瀬巴水と比べるとちと劣ります。

なぜ一連の東海道五十三次の中にここで雪の蒲原を入れたのでしょう?
やはり気分転換でしょう。

2-3-3:
十九番  島田

一見大した事ない絵。
オマケに題名と落款を対角線上の目立つところに置き、
バランスを取ってます。
実に大雑把な絵の構成です。
目立つのは空間。
川原です。
大井川の川原です。
「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」
の大井川です。
雨が降り増水するとこの広大な川原が川になる、と大井川の大きさと困難さを暗示してる訳です。

2-4:
出来がイマイチの絵

どうも質が落ちる絵があります。

2-4-1:
第十九番  府中

安倍川と渡る人々。
川渡りを描いているのは全部で五つ。
(小田原、興津、府中、島田、金谷)

この「府中」はショボイなぁ(涙)。
かなり頑張って絵を作った雰囲気が強い。
画面水平線付近、安倍川の対岸辺りを何やら白い帯状物体で隠している。
その土地の特徴を描きたいんだろうけど、無かったんだろうなぁ…
例えば、一つ前の18番「江尻」なら久能山からの眺望(清水の港、三保の松原、駿河湾、伊豆半島、富士山)があります。
でも、ここ府中は無かったんでしょう(溜息)。
それで水平線付近に白い帯状物体を描き「こりゃ何だね
?」と思わせるしかなかったんでしょう。

2-4-2:
二十四番 金谷
二十五番 日坂(にっさか)

この二つはそれ程悪くはないんですが、
九番   小田原
十番   箱根
の組み合わせと同じなんで、二番煎じ。


3:
冨士三十六景

これ、ダメだわ(溜息)。
東海道五十三次」と比べちゃ気の毒。
広重、やる気なかったんだろうなぁ…(溜息)。
出来具合が「東海道五十三次」と全く違います。





タグ 広重 東海道五十三次 冨士三十六景 太田記念美術館 川瀬巴水





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『歌川広重 ~東海道五十三次と冨士三十六景』 前期その1

★簡単な紹介

太田記念美術館

前期:2016年4月29日(金・祝日)~5月26日(木)
後期:6月1日(水)~6月26日(日)

HP→http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/utagawa-hiroshige


広重が好きだし、東海道五十三次はまとめて全部(、と言ってもこの展覧会でも半分づつですが、まぁ半分でもいいか(笑))見たことないし、
冨士三十六景は本物をまだ見たことなし。
太田記念美術館も原宿の表参道を歩いていると、いつも看板の前を通り過ぎ「いつか行ってみたい」と思っていたので、
行ってきました。


今回も原宿駅と原宿周辺の人出は大変なもんでしたが、先月根津美術館へ「燕子花図屏風」を見に行った時よりは少なくて、
少々ホッとしました。
それでも、多いよなぁ(溜息)。


1:
この太田記念美術館へ行ったことある方なら御存じと思いますが、
ここも意外と小さい。
先日行った向井潤吉アトリエ館と同じ位の規模。

お金持ちが作った美術館、または残した収集品を展示するために作った美術館、それも東京の都心に建てるとなると、
こんなもんなんでしょう。
御近所の根津美術館が如何に例外的に巨大か、改めて分かりました。

サントリー美術館の「原安二郎コレクション 広重ビビッド」の半券を出すと、入場料が¥100引き。
逆に太田記念美術館の今回の展覧会の半券をサントリー美術館で出すと同じく入場料が¥100引きになります。

人出もそれ程多くなく、落ち着いて見られます。
日本の芸術家で世界中最も有名な広重ですから、白人の方もかなりいらっしゃいました。

それでは、ブラブラ見て行くと…


2:
東海道五十三次

図版はWikiにあるので参考に
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E9%81%93%E4%BA%94%E5%8D%81%E4%B8%89%E6%AC%A1_(%E6%B5%AE%E4%B8%96%E7%B5%B5)


2-1:
やはり、広重の代表作には間違いありません。
今回は26番目の掛川宿まで。

全体に穏やかな雰囲気ですが、細部の作り込み等は今回同時展示されている「冨士三十六景」とは誰の目にも明らかです。
また穏やかな雰囲気を漂わせながらも、題材はあまり穏やかとは言えない作品もあります。
どの作品も基本的に2本の対角線を中心とした構図になっています。

広重の「名所江戸百景」の「おおはしあたけの夕立」の不安定な構図が自然の恐ろしさを暗示するように、
この「東海道五十三次」も300年後の私達が想像する様なノンビリと風景を楽しみながら旅をするのとは違うと告げています。

確かに当時は国内情勢も安定し、治安も保たれ、常に周囲に目を配り緊張感を保ちながら旅行するのは過去の事になりましたが、
それでも科学も医療も発達していませんでしたから、やはり現在と比べれば安心感は違います。
天候の変化も予測しにくく、衛生概念さえ無いも同然ですから簡単な病気やけがでも重症化する恐れは遙かに大きかった。

現代の我々の基準から考えると、当時の長距離の旅行は、辛く、大変で、危険なものでした。
だからと言って、当時は江戸からお伊勢参りへ行くのが流行った位ですから、屈強な男しか旅行に出れないと言うのではありません。
意外と注意力や観察力等が必要で、油断するとケガや病気になる、と言う事です。

現在の感覚だと、登山、それも縦走が近いのではないでしょうか?

2-2:
簡単な旅ではないと示す作品。

一番   品川
三番   神奈川
六番   藤沢
九番   小田原
十番   箱根
十一番  三島
十六番  由比
二十一番 岡部
二十四番 金谷
二十五番 日坂(にっさか)

2-2-1:
一番   品川
三番   神奈川

徒歩の旅なのに、中央にあるのは海で、道はどちらも右端。
そして海は入江になっていて、道はそれに沿って曲がり進んで行くと暗示する構図になっています。
道の行き先は遠く、オマケにどちらの作品も船の帆で隠され遠さを強調してます。

日本橋を出てまだ最初と三番目の宿場で道の遠さ、旅の長さを強調する絵にしています。
オマケに神奈川宿では坂道にするご丁寧さ(笑)。

2-2-2:
六番   藤沢

日本橋から12里18町、約49㎞。
江島神社の一の鳥居が描かれています。

当時は大体一日に8里から9里(35㎞位)歩いたらしいので、初日に保土ヶ谷泊まり(8里9町、約32㎞)、
保土ヶ谷から4里9町(約17㎞)。
一息入れ、改めて旅の安全や無事故を願う、と言う事でしょうね。

2-2-3:
九番   小田原
十番   箱根
十一番  三島

絵も素晴らしい出来ですが、

「小田原」の酒匂川の渡河、先に聳え立つ箱根の山々、
「箱根」の山々の急峻さ、
「三島」での三島神社の鳥居の強調、

これらの一連の流れを見ると
東海道の江戸から来た時の最初の難関、京から来れば最後の難関、
そして旅の油断大敵の厳しさ、無事故と安全の祈り、
を表してるのがよく分かります。

「小田原」の遠景の箱根の山々の描写の素晴らしさ、美しさ。
正に東海道を旅する一面、景色を楽しむを非常に巧く表してます。
同時に背景に鎮座し、巨大な存在感を与え、美しいだけでなく油断大敵も表してます。
「箱根」の山々も同様。
これ程美しく、同時に何やら生物の様な感じを与え、人を襲うかもしれないと不安感も与える描写、他で見たことなし(@_@)。
「三島」の霧、これも五里霧中、先行きの油断大敵さ、大変巧く表してます。
同時にその霧の中に際立つ三島神社の鳥居は、勿論、旅の安全を願うもの。

この「箱根」に描かれた箱根の山々とポール・セザンヌが晩年に描き続けたサント・ヴィクトワール山を比べると、
存在感の違いは歴然。
「箱根」の下手な模写にしか見えないのは私CYPRESSだけでしょうか?

2-2-4:
十六番  由比

この「由比」、ある意味、とても広重らしい(^.^)。
絵の真ん中に木を2本も持ってくるとは…(溜息)。
絵の描き方を少しでも勉強したことあれば、こんな画面構成を壊すこと、やろうと考えさえしません(笑)。
それを実際にやるは、しかも巧く構図にまとめるは、広重の絵心に今回も脱帽(笑)。

描かれているのは由比宿と興津宿の間にある薩た峠(さったとうげ)。
描かれている通りの難所だそうです。
落ちたら相模湾へ真っ逆さまだぜと、視線を誘導する巧みさ。
その誘導係が画面中央の2本の松君達です(笑)。
画面左側の陸側は全体に暗い色にし、足元の不確かさを強調する丁寧さ(笑)。
それに対する画面上半分の空の明るさは、陸側の色とのバランスを取り、同時に富士山も見える風光明媚さも表してる訳です。

傑作ですよ、この絵は間違い無く。
これ程美しく、多くを語る絵は、まずありませぬ(^.^)。

2-2-5:
二十一番 岡部

この絵は見たままの単純。
左右から迫る宇津之谷峠の山裾の圧迫感。

2-2-6:
二十四番 金谷
二十五番 日坂

九番の「小田原」と十番「箱根」と同じ構図、構成です。
箱根の山々はありませんが、小夜の中山という峠があり、箱根峠、鈴鹿峠と並び東海道の三大峠(=難所)にされていました。
登山やハイキングをされている方なら分かると思いますが、
「日坂」に描かれている小夜の中山の斜面、これ位の急坂は山の中に入れば普通にあります。

2-2-7:
以上、改めて見ると、そんなお気楽な面ばかりでないと今回分かった次第です。


「その2」では、今回書かなかった点を書きます。





タグ 広重 東海道五十三次 冨士三十六景 太田記念美術館





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最近好きな女優は杉村春子と中谷美紀。
好きな監督は黒澤明と張藝謀。
気になる監督は堤幸彦。
山田孝之の実力が分かってきました。

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