小津安二郎の言葉

朝日、2014年7月13日(日)、地域総合首都圏版
小津安二郎がいた時代 赤いやかん 好きなものが最優先」

から

(前略)

>小道具も衣装も本物にこだわるのは
「カメラを通すと偽物はすぐにわかる」
という思いだった。

>好きなものが最優先で、本物志向だった小津は、
「おれの演出は、現実的におかしいかどうかということよりも、
もっと芝居の本質に観客の目がいくように作っている」
と自信を語っていたという。

>小津が残した言葉がある。
「なんでもないことは流行に従う。
重大なことは道徳に従う。
芸術のことは自分に従う」。
その言葉通りの信条を終始貫いていた。


1:
映画やドラマは好きなので映画ドラマ関係の新聞の記事は、とりあえず、全て読みます。
この「小津安二郎がいた時代」も毎週読んでいます。
私の記事を読んで頂ければ分かる通り、私は小津安二郎の映画が好きになれません。
わざわざ小津に関する本を買う気にもならず、小津の演出や映画がなぜああなるのか考えてみようともしませんでした。

朝日のこの記事のおかげで、理解が進みそうです。

>「おれの演出は、現実的におかしいかどうかということよりも、
もっと芝居の本質に観客の目がいくように作っている」

小津映画の「非現実感」が重要で、捉え方に注意が必要な様です。
「おかしい」とか「変だ」とか「ありえない」とかの拒否反応を起こすと理解出来ないのでしょう。


2:
小津の映画は、4本観て十分だと思いましたが、今回の朝日の記事にも引用される『彼岸花』を初め、
また観てみるかと気持ちが変わってきました(笑)。
値段が高い朝日は止めようと思い続けているんですが、購買部数減少に歯止めが掛からない危機感が朝日に芽生えた様で、
最近は購読者の興味を刺激する読むべき記事が増えてるみたい(笑)。




タグ 小津安二郎



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『秋刀魚の味』

★簡単な紹介

○公開
1962年11月18日

○スタッフ
脚本:小津安二郎、野田高梧
演出:小津安二郎
撮影:厚田雄春
美術:浜田辰雄、荻原重夫
音楽:斉藤高順
照明:石渡健蔵
プロデューサー:山内静夫

○出演
杉村春子(佐久間伴子)
東野英治郎(佐久間清太郎)
岸田今日子(BARのマダム)
加藤大介(坂本芳太郎)
笠智衆(平山周平)
佐田啓二(長男 平山幸一)
岡田茉莉子(幸一の妻、秋子)
岩下志麻(長女 平山路子)
吉田輝雄(三浦豊)


★評

小津安二郎の遺作

1:
何か、小津安二郎って、役者に演技させないんだなぁ…
だからどの映画観ても、印象が変わらないんだ。
観たのはまだ4本目だけどね。

2:
それと台詞の間の長さもどの映画でも、同じ。
観たのはまだ4本目だけどね。

3:
会話なのに一人づつ写すカットが多く、このために台詞の間が必要以上に長くなってる様です。
台詞の間の悪さは役者のせいではありません。
そんな中で目立つのは、やはりこの作品でも杉村春子
この方の演技、ちょっと次元が違うなぁ。集中力が他の役者と全然違うんじゃないんでしょうか?

4:
さて、映画自体は、あきまへん。
私には野球と同じで間が多過ぎる「すかすか」な映画は、全く合いません。
どこがいいか、杉村春子以外、どこがいいのか全く分かりません。


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『麥秋』

★簡単な紹介

○公開
1951年10月3日

○スタッフ
脚本:野田高梧、小津安二郎
演出:小津安二郎
撮影:厚田雄春
音楽:伊藤宜二
美術:濱田辰雄
プロデューサー:山本武

○出演者
原節子(間宮紀子)
笠智衆(間宮康一)
淡島千景(田村アヤ)
杉村春子(矢部たみ)
佐野周二(佐竹宗太郎)


★評

1:
まず「麥」は「むぎ」の旧字。
だから「麥秋」は「ばくしゅう」。
意味は、初夏の頃、陰暦4月の別名。

2:
上映時間125分は長い。
登場人物の会話の間が長いのも上映時間を延ばしてる原因の一つでしょう。
間宮家の人間が紀子(原節子)の結婚を心配し黙り勝ちになるのは問題無いんですが、それ以外は間が長過ぎます。
全体に台詞の間が長いので小津安二郎は何かを意図していると思いますが、考える気にならず。
会話の間が不自然に長いのであの杉村春子でさえ手に負えない様です。

3:
間宮家の子役二人の演技が酷い。
60年後の鈴木福や藤本哉太がいたらこの二人は絶対未来永劫採用されるはずがありません。
なによりも笑顔が全く可愛くない。
最後の家族写真を撮る場面、写真を撮る前に野球帽をかぶるかかぶらないか悩むカットで二人が全然楽しそうじゃない。
このカットは子供にとっては遊んでるのと同じですから夢中になってる表情か笑顔にならなければおかしい。
まともな子役は10年後の『チャコちゃん』シリーズの四方晴美(『生きる』の小田切みきの次女)の登場までまたないといかんのでしょうか?

4:
名作の誉れ高い映画ですが、それそれ程の出来には全く思えません。
例えば、間宮康一(笠智衆)が食パン一斤買って帰ってきた場面。
子供達は自分のために鉄道のオモチャのレールを買ってくれたと思いましたが、違っていたので怒りパンを投げ蹴ります。
それから父親の康一に文句を言い、怒られます。
このシークウェンスが全然駄目。
子供達の失望と怒り、食べ物を大事にしない子供に対する父親の烈火の様な怒りが全く表れてません。
戦中戦後の食糧難を経験し食料の貴重さを知り、子供には飢えさせたくない康一の思いと愛情が表れてません。
感情的短絡的になるのは妹紀子(原節子)の結婚問題に悩んでるからなんですが、それでもここも不自然な間が多く康一の感情的短絡的な行動を表せていません。

5:
杉村春子でもお手上げの脚本ですから、笠智衆原節子も相変わらず大したことなし。
笠智衆は熊本訛りが抜けず、東京か北鎌倉で生まれ育ったに間違いない康一が訛るのは違和感全開100%。
なぜ学生時代に熊本で過ごしたなんて設定にしなかったんでしょう?
小津安二郎と野田高梧の脚本の致命的な欠陥です。
特にこの映画では矢部謙吉(二本柳寛)が秋田の病院に転任になるので紀子と田村アヤ(淡島千景)が秋田訛りらしき訛りで話す場面があるので、
脚本の欠陥が余計に目立ちます。

不自然な間が多いのですから、康一が訛る原因を伝えるカットを入れられないはずありません。
北鎌倉に移って足掛け16年、そして間宮周吉(菅井一郎)は大和の出身の設定の様ですが、そうなると周吉や紀子に訛りが無いのがおかしくなります。

6:
原節子もなぁ…
演技力の無い役者には興味が無いので原節子は私の好みではありません。
杉村春子の方が遥かに好き。
まぁ、スターなんでしょう、演技力を要求されない。
表情の変化の無さと硬さはスターの最大の特徴。

7:
紀子の勤め先のビルの室内のセットが戦後建てられた新築のビルとして設定されてると思いますが、
これがどう見てもセット以外の何物でもなし。
チャップリンの映画のセットの様で非常に映りが悪い。

逆にこのセットのビルとして撮られているビルのカットが『コヤニスカッツィ』並に美しいので映像の悪さが余計に目立ちます。

8:
最後の風に波打つ麦畑のカット。
この映画で一番出来が悪い場面がここでしょうね。
全く美しく撮れていません。
張藝謀の『初恋のきた道』のカラーになる最初のカットの麦畑とエラく違います。
カラーと白黒の差や、フィルムの経年劣化のためではありませんゾ。
黒澤明なら美しく撮れたはずです。

最後に出来の悪さを見せられちゃ評価を上げられるはすがないぜよ。

9:
話自体は名作の誉れ高い映画ですから、欠陥が目立ちながらもそれ程悪くありません。
60年経っても「自分のことを心配してくれ家族の気持ちは分かるけど、言葉には出さない」が今でも受け継がれているからです。

それでも60年経ってから観ると、退屈。

この映画の前年1950年に撮った黒澤明の『羅生門』が嘘吐きという人間の本質を描き万古不易の傑作になったのとは、やはり違います。
まぁ、内容や主題が違いますから比べられないのは分かってますが、それでもねぇ…

10:
『東京物語』、『晩春』、『麥秋』と小津安二郎を3本観ましたが、好みではありません。
やはり黒澤明の方が好きです。


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「晩春』その1

★簡単な紹介

〇公開
1949年9月13日

〇スタッフ
原作:廣津和郎『父と娘』
脚本:野田高梧、小津安二郎
演出:小津安二郎
撮影:厚田雄春
音楽:伊藤宜二
プロデューサー:山本武

〇出演者
笠智衆(曾宮周吉)
原節子(周吉の娘、曾宮紀子)
杉村春子(周吉の妹、田口まさ)


★評

これも2005年発売のデジタルリマスター修復版を観ると…

1:
映像が乱れる場面が一ケ所有ります。
チャプター9「紀子の同意」
1時間8分~1時間11分
紀子が周吉からお見合いを勧められ、それから2階の自室へ行き泣く場面。

2:
杉村春子、巧いね。
この映画が小津映画初出演で、以降常連になったとか。
観れば納得。
笠智衆原節子が演技派とは言えないからその辺にいるオバサンをやってるだけの杉村春子が目立ちます。

3:
出来具合は、イマイチ面白くない。
台詞毎にカットが変わるのがちと目障りだし、時間の経過だけを表してる様なカット(→北鎌倉から東京へ行く横須賀線)等は冗長にしているだけだなぁ。
原節子はDVDのジャケットには

〉その輝くばかりの美しさと父親を演じた笠智衆に対する、微妙な愛情を見事に表現した。

なんて書いてあるけど、どう考えても「微妙な愛情」を表現出来てません。
表情の変化が乏しいし、所作振舞も大雑把。
この演技で毎日映画コンクールで女優演技賞を獲ったとは信じられません。
それでも主張する力が強い美貌で美しいことは間違い有りません。

中谷美紀や宮崎あおいならもっと巧く出来るはずです。

4:
笠智衆を初めて観たのは、私の世代だと1970年代前半の連ドラ『おれは男だ』(主演森田健作のおじいちゃん役)ではないでしょうか?
笠智衆(熊本県)、志村喬(兵庫県)、藤田進(福岡県久留米市)など20世紀初頭に生まれた役者はTVの全国放送以前に日本語を覚えたから訛りが有ります。
笠智衆は訛りを巧く利用して素朴な、朴訥なオヤジやおじいちゃんになり、悪くありません。
「馬鹿野郎」と「この野郎」を連発する泉谷しげるの、ある意味で個性派の先輩に当たります。
ただこれだけ個性を確立すると、役が限られます。
笠智衆自身はどう思っていたのでしょう?敵役とかやりたいと思ったことはないんでしょうか?

4:
し、か、し、杉村春子は広島県広島市の出身。
「!」であり「溜息」です。
東京の都心で杉村春子自身が演じるオバサン達を見て育ったと思わせる名演。
その演技力の影響はネットで簡単に調べても巨大なのがよく分かります。
例えば、影響を受けた女優はWikiによると:
・高峰秀子
・森光子
・吉永小百合
また小津安二郎が台本の読み合わせに出なくても許した唯一の役者(溜息)。
すげーなー、大した役者です。

5:
この映画も『東京物語』と同じく台詞が耳に優しく心地良い。


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『東京物語』その2

1:
演技の方は、長女志げを演じる杉村春子が実力を発揮しています。
金子志げと言う人物は、

“少々気が強く、思っている事を遠慮せずに言う。”
“遠慮する事を知らないから母親の形見として欲しい物をハッキリ言う。”

→こういう志げに違和感皆無の杉村春子です。
この演技で毎日映画コンクール女優助演賞を獲ったのも当然。
そして紀子(原節子)の謙虚さや優しさを際立てているのが杉村春子が演じた金子志げです。

2:
そして周吉を演じる笠智衆
笠智衆は当時48歳で周吉は72歳の設定。
ん~…
どう見ても、考えても、48歳じゃなくて健康で元気な72歳だよなぁ。
そんなかくしゃくとした72歳でも、苦しみ、悲しみ、苦労を経験したのは間違いなく、それらの重大さを表す背中の曲がり具合。
もう一つが、口。
ちょっと開いてる場面が多い。
つまり、
口がちょっと開いてることが多い→溜息が多い→苦労が多かった→口が開くことが習慣になっている。
なんて想像出来ます。

3:
映像はあちこちで読んだ通りカメラの位置が低い。全編を通じ徹底して低い。
畳がある日本間だけでなく板の間になった長男幸一(山村聰)の診察室、紀子や三男敬三(大坂志郎)の仕事場までも。
更に紀子が連れて行く周吉(笠智衆)ととみ(東山千榮子)の東京観光のバスの車内の場面でさえカメラの位置が低い。
なぜ?
分かりません(笑)。
子供の視点でもなく、畳に座った時の視点よりも低く、消失点は更に低く畳に近い。
だから卓袱台や座卓に載った食べ物が見えず何だか分かりません。
これは猫か布団を敷いて寝ている人間の視点ですな。

演出か?
映像表現か?
小津安二郎の好みか?

ちょっと研究してみたい。

4:
周吉(笠智衆)ととみ(東山千榮子)の喋り方が他の登場人物(二人の子供達)より遅い。
これは間違いなく演出。
直ぐに思い付くのは、二人が暮らす尾道の「のんびりさ」。言い換えると、時間の流れが遅い田舎を表してます。
その他には、
・時間を気にして暮らす必要が無い。
・今迄の苦労の大きさと重さのため。

5:
そしてこれまたあちこちで読んだ通りカットの切り返しが多い。
登場人物の台詞毎にカットが変わるみたいですから、カットの総数はかなり多いのでは?
なぜ?
これも分かりません(笑)。
要研究です。

6:
台詞は謙譲の美徳が色濃く支配していた時代ですから、反語的な使い方が多く字面通りには捉えられません。
特にとみの葬儀の後、周吉と紀子の会話は感じ取るもの。
反語的な言葉遣いと率直な言葉遣い両方が出て来ます。
英語を初め外国語に訳すのはかなりの難しいはずです。
60年後の日本人もかなり率直な言葉遣いになりましたから、若い人の中にはなんでこんな回りくどい話し方をするんだと思う人も少なくないでしょう。
私もそう思う一人ですが(笑)、意外と耳に優しく違和感が少ない。こう感じるのも映画自体の力による様です。

この点も要研究。

7:
と、こんな具合に色々書きたくなる程濃密な映画ですが、第一印象はイマイチ面白くない。
136分は長いよなぁ。
脚本でたとえると、「…」が多い。
黒澤映画の絵画を思わせる様な映像が無いのも上映時間の長さを感じさせる原因です。


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『東京物語』その1

★簡単な紹介

〇公開
1953年11月3日

〇スタッフ
脚本:野田高梧、小津安二郎
演出:小津安二郎
撮影:厚田雄春
音楽:齊藤高順
プロデューサー:山本武

〇出演者
笠智衆(平山周吉)
東山千榮子(平山とみ)
原節子(紀子、戦死した次男平山昌二の嫁)
杉村春子(金子志げ、長女)
山村聰(平山幸一、長男)
三宅邦子(幸一の妻文子)
香川香子(平山京子、次女)
東野栄治郎(沼田三平、周吉の旧友)
中村伸郎(志げの夫)
大坂志郎(平山敬三、三男)
十朱久雄(服部、周吉の旧友)
長岡輝子(服部の妻)


★評

黒澤明とアメリカに渡ってからのヒッチコックをほぼ観て、さて次は小津安二郎や溝口健二を観ようかと思ったら映画やドラマを観るのを止めちゃったからなぁ。
だから観ようと思ってから、何と、

20年

も経っとります(汗)(^_^;)。
ヤレヤレ(溜息)

2005年発売のデジタルリマスター修復版を観ると…

1:
修復の具合は、まず映像の方はまあまあかな。ハッキリ言ってDVDのジャケットのスティル写真の方がかなりキレイです。
でも個人的には不満は有りません。
ただ映像の上下の揺れが目障りで、最初の方は視線が余計な揺れに向かい映画に集中出来ず困りました。
音声の方は、日本語字幕も出せますから問題有りません。

2:
最初のクレジットタイトルで流れる音楽が、大袈裟。
映画の内容を考えるとこんなに仰々しい音楽は不要。
しかし映画本編では逆に殆ど音楽が入らず、中々好ましい。

3:
物語はDVDのジャケットの解説によると「親子の断然」。
子供が仕事をし、家庭を持つと親が煩わしくなる、という事。
それを親と子両面から描いてます。
60年近く経った2011年でも、この点は変わってません。逆に60年前には既に有った事が目新しく驚きです。
言い換えるとこの『東京物語』も古典の一つです。
3-1:
Amazonのレビューを見ると子供達(→と言っても全員中年)を気に入らない方が多い様ですが、私にはかなり現実感があり巧い人物描写だと思いました。
両親を煩わしくも思い愛しくも思っているところが大変いい描写です。
昌二の嫁の紀子(原節子)以外は、いかにも隣にいそうなオヤジとオバサン達です。
思春期になり精神も成長すれば、両親の欠点や嫌いな点が分かって当然。
それでも嫌いになりきれないのが親子であり、家族。
3-2:
長男幸一(山村聰)の孫二人が祖父母(笠智衆、東山千榮子)に懐かないのも巧い描写です。
当時の交通事情を考えれば、孫達(特に次男の勇)が祖父母に会うのが初めてなのも十分有り得ます。
たとえ血は繋がってても生まれてから会わなければ、孫達にしてみれば祖父母も他人なんです。
3-3:
全体に会話が少ないのも日本的であり好ましい。
その中でも祖母とみ(東山千榮子)が危篤になった場面から葬儀の翌日迄の会話の少なさは、興味をそそります
子供達は何を思い、考えているでしょう?
物語を考えれば、

「もう少し優しくすれば良かった」
「もう少し年老いた両親の気持ちを考えれば良かった」
「義理を立てたんだからそろそろ帰りたい。仕事が詰まってるからな」

なんて事でしょう。
3-4:
子供達が年老いた両親を少々邪険に扱いながらも悲惨さが漂わないのは、
・言葉遣いが丁寧
・年長者に対する敬意を失ってない
からです。
言い換えると、日本古来の良い教育で育てられた(残念ながら)最後の世代だからです。
日本の伝統的な道徳教育の良さが表れ中々宜しい。
巧い脚本です。
3-5:
そしてこれにハッキリと対比しているのが、祖父母が長男の家へ来た時の孫達の挨拶。
孫達が祖父母に対し愛情を感じないのは構いませんが、長男夫妻がきちんと挨拶させないのは問題が有ります。
(→映画としては問題有りません)
長男実は中学生だけあり、帽子を取ってお辞儀しますが、次男勇は人見知りしてお辞儀さえしません。
自分達が両親から受けた躾の一つである「年長者を敬う」を子供達にやっていません。
志げ(杉村春子)か紀子が離れた所で勇に教え諭す脚本にして欲しかった。親だと関係が濃密過ぎ反発しやすいので、優しい親戚の伯母さんや近所のオバサンのが言う方がいい。幼くても自分を客観的に見やすく反省しやすいからです。
ちょっと深読みになりますが、1945年を境に日本人が伝統的な道徳教育を失い堕落し始めたのが、早くも、そして明確に表れていると捉えるのも可能です。
ひょっとしてこの辺の変化を脚本を書いた野田高梧と小津安二郎が敏感に感じ取り表しているなら、社会に対する関心が大変鋭い。そして大変素晴らしい脚本です。
3-5:
思いやりが深い紀子(原節子)の台詞は謙遜に満ちていて、60年後の私には予想以上に新鮮であり、意外と悪くありません。
最後に周吉が紀子を褒めると「自分は偽善者なんです」と紀子は言います。
この「偽善者」は色々解釈出来ると思います。
私は、実は紀子も志げの様に周吉ととみを煩わしく思っていると思います。
しかし志げと違いその思いを抑えるだけの良心が有り、愛情も志げより強いと思います。

周吉ととみとは血縁が無いので、少々他人行儀であり、そのため精神的に適切な距離を取りやすく愛情を表現しやすいのかもしれません。

他人に自慢出来る程善人でない事を紀子は分かっている、と言うのが私の解釈です。


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プロフィール

CYPRESS

Author:CYPRESS
最近好きな女優は杉村春子と中谷美紀。
好きな監督は黒澤明と張藝謀。
気になる監督は堤幸彦。
山田孝之の実力が分かってきました。

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