『アメリカン・スナイパー』

★簡単な紹介

○公開
2015年2月21日(土)

○上映時間
2時間12分

○スタッフ
原作:クリス・カイル
脚本:ジェイソン・ホール
演出:クリント・イーストウッド
撮影:トム・スターン
プロデューサー:クリント・イーストウッド、ロバート・ロレンツ、ピーター・モーガン、アンドルー・ラザール、ブラッドリー・クーパー

○出演
ブラッドリー・クーパー……クリス・カイル
シエナ・ミラー………………タヤ・カイル
マックス・チャールズ………コルトン・カイル

ルーク・グライムス…………マーク・リー
カイル・ガルナー……………ゴート=ウィンストン
サム・ジェーガー……………マーテンス提督
ジェイク・マクドーマン……ライアン・“ビグルス”・ジョブ
コリー・ハードリクト………“D”/ダンドリッジ




★評


1:
よく出来た映画です。

戦争映画の佳作です。
非常に冷静に描き、好感が持てます。

アメリカの戦争観を表してますが、それを声高に批判していません。

クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)の父親の言動、

>人間には3種類いる。
羊、狼、番犬だ。
大人しい人間が羊、それを襲うのが狼、その狼に対抗するのが番犬だ。
クリス、今日からお前の弟が虐められたら、そいつを殴るのを許す。

まぁね、対処療法も必要なんです。

だからと言って賛美しているのでもありません。

2:
でも、戦争の無意味さと狂気を冒頭から表しています。
クリスがイラクへ派遣され狙撃手として最初に殺すのが子供。
母親とおぼしき女性が子供へ対戦車手榴弾を渡し、アメリカ兵達へ投げようとしたから。
(その子供が殺された後、その母親とおぼしき女性が拾い投げようとし、クリスに殺されます)

40年前のヴェトナムでゲリラ戦になり、現在はテロリズム。
子供も女も関係無く、人間は全てアメリカの敵になってしまいました。
正規軍だろうとなかろうと、相手は全て敵。

…だからと言って、子供を殺せるか?
…狂ってますよ。

…同時にアメリカ人の単純さも表しています。
…クリスが殺す子供と同じです。
…親に言われた事を鵜呑みにし、何も考えず言われた通りにします。


3:
映画の中の敵役、反米組織(?)、そのリーダーザルカウイの右腕がドリル使い。
米兵と話した人間を殺します。
その時使うのがドリル。
相手が子供だろうが関係無し。

…確かに邪悪な行動です。
…でも、米兵へ対戦車手榴弾を投げようとした子供を殺したクリスと同じです。
…米軍もザルカウイ派もやってることは、どう言い繕うとも同じなんです。

…オマケに敵への攻撃、自衛のために、動機はどうであり人様の財産である建物を破壊する。
ザルカウイ側も米軍も。

…互いに自分が善である、正義であると主張しながらもその行為が一般市民に何をもたらすか一顧だにしないのが戦争。
これをハッキリと示しています。


4:
また、興味深いのがクリスの死に方。
兵役を退いた後の仕事が帰還兵の社会復帰の手伝い。
帰還兵の一人と射撃中に射殺されます。

何たる皮肉な人生。
武器と銃の愚かさで常に思い出すのがマタイ傳の一節。
ゲッセマネでイエスが祭司長と長老達の捕縛に捕えられる時、イエスの仲間の一人が捕縛の一人の耳を切り落とします。
その時のイエスの言葉、
>なんぢの剣をもとに収めよ、すべて剣をとる者は剣にて亡ぶるなり。
~マタイ傳26章52節~


5:
更に興味深いのがクリスが仕事に有能であるだけでなく、夢中になっている事。
クリスが帰還し家にいても嫁のタヤ(シエナ・ミラー)には、心がここに無いと言われる始末。
クリスの設定を軍人でなく、他の仕事に変えても単なる仕事人間だと分かります。

軍人にとって戦争は、他の職業と同じく仕事にすぎないのです。
善悪と関係無く、家族を養うため、生きていくために絶対必要な仕事にすぎないのです。
戦争を仕事として捉え、これ程冷静に描いた戦争映画は他で見た記憶がありません。

ニーチェの言葉で
>男が夢中になれるのは二つだけ。危険と遊びだけだ。
と言う類の言葉があるそうです。
この続きが、
>男が女を愛するのは、それが遊びに中で最も危険だからだ。
との事。

しかし、この映画で思い出し、触発されたのは前半。
男の遊びの一つに「機械」があります。
開発、設計、製造、販売、使用、全て男の遊びに、少なくとも、繋がってます。
特に使う事には、「自由と支配」がります。
つまり、使いこなす事はとても面白く夢中になります。
そこに生命の危機が加わったらどうなるでしょう?
止められません。
更に正義、大義、愛国心と言う言い訳が加われば、何の躊躇いも無くなるでしょう。

戦車、大砲、戦闘機、銃、クリスの商売道具である狙撃銃、
男が夢中にならないはずがありません。
主義主張、イデオロギー、外交と国益、等とは全く関係無いんです。
戦争を仕掛ける方はともかく、戦場に出る方は、クリスの様に体と心が頑健なら、
クリス自身も戦闘疲労症候群に罹り、性格の変わり様に嫁のタヤは大変心配してますが、
(→クリスの弟は心がもたず除隊)
戦争大歓迎、大好き、なのではないでしょうか?


戦争が面白いなんて言った、書いたのは、私の少ない経験では、
小林よしのりの『新ゴーマニズム宣言 SPECIAL 戦争論』の
「第15章 痛快な戦争体験」
しかありません。
幻冬舎版のp.271から、
>戦争はイヤです わしも!
>けれど戦争は面白い あなどれない
>決して「戦争は悪」の一面でぬりつぶせるような単純なものではない



5:
この映画でも「戦争は面白い」と明言はしてませんが、
暗示はしています。

やはり、クリント・イーストウッドは大した映画人です。

去年の安保法案改正に関し反対の人も賛成の人も、
戦争に関し改めて考えるには最適な映画です。
是非観る事をお勧めします。

最後に小林よしのりの言葉をもう一度、

>戦争はイヤです わしも!
>けれど戦争は面白い あなどれない
>決して「戦争は悪」の一面でぬりつぶせるような単純なものではない






タグ クリント・イーストウッド 小林よしのり アメリカン・スナイパー 戦争論





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テーマ : 洋画
ジャンル : 映画

『許されざる者』

★簡単な紹介

○公開
1993年4月24日

○上映時間
2時間11分

○スタッフ
脚本:デイビッド・ウェッブ・ピープルズ
演出:クリント・イーストウッド
撮影:ジャック・M・グリーン
美術:エイドリアン・ゴードン、リック・ロバーツ
音楽:レニー・二―ハウス
プロデューサー:クリント・イーストウッド

○出演
クリント・イーストウッド(ウィリアム・ビル・マニー)
ジーン・ハックマン(リトル・ビル・ダゲット)
モーガン・フリーマン(ネッド・ローガン)
リチャード・ハリス(イングリッシュ・ボブ)
ジェイムズ・ウールヴェット(スコフィールド・キッド)
ソウル・ルビネック(W・W・ブーシャンプ)
フランシス・フィッシャー(ストロベリー・アリス)
アンナ・トムソン(ディライラ・フィッツジェラルド)
アンソニー・ジェイムズ(スキニ―・デュボイス)



★評
日本版リメイクが作られたんで観てみると…


1:
へぇ~、意外と出来がいいじゃないですか(^.^)。

特に敵役リトル・ビル・ダゲットを演じたジーン・ハックマンが非常に、物凄くいい、巧い。
こんな名優だったとは…(^.^)。
過不足が無い演技とはこういう演技を言うんだなぁ。
特に敵役に付き物の誇張された卑怯や凶悪が無いのが非常にいい。
こういう人間が、こういう悪人がいるんじゃなかと納得させる現実感が有ります。
そしてこの憎々しさ!
ハックマンのこの演技を観られるだけでも、この映画はすばらしい。
アカデミーの助演男優賞を獲って当然だなぁ。

架空の町ビッグウィスキーを作ったロケ地も素晴らしい。
張藝謀(チャン・イーモウ)のロケ地も素晴らしい所ばかりですが、ここも美しい。
森林にならない少雨地帯だけあり空の透明感と色も美しく、張藝謀の映画に匹敵しています。

過去の西部劇はこんな所じゃ農業も牧畜も出来ないだろうと思える砂漠ばかり。
シリコンバレーでもあるまいし、産業が有るはずもない所で撮影し、人が暮らして行けない土地ですから現実感皆無。
このロケ地は木は育たなくても草原にはなる場所ですから、牧畜をやっていてもおかしくありません。
画面に映る草が非常に現実感があり、この単なる草が映画に現実感を与え観客の関心と集中力を捉え、映画に引き込んでいます。

銃も新旧を表し、宜しい。
元悪者のウィリアムが使うのは一世代前の銃であるパーカッションリヴォルヴァ―。
ビッグウィスキーの連中はパーカッションを使えば、コルトのシングルアクションアーミー(SAA)も使ってます。
時代設定が1880年ですから、金属製薬莢を使うSAAが出て来ても間違っていません。

もう一つ素晴らしいのが、夜の場面が十分暗い。
電気が無い場所と時代の設定ですから、昼間の室内も十分薄暗い。
日本の時代劇の明るさに辟易してる私には非常に好ましい。


2:
内容は、善と悪の灰色地帯。

2-1:
、と言うか完全な善人は主要登場人物にはいません。
善玉のウィリアムも元悪人で現在は改心しながらも子供の将来のために金が必要で、再び殺人を犯すはめに。
法の番人である保安官リトル・ビル・ダゲットもよそ者を殴る蹴るのやりたい放題。

過去の西部劇の特徴である善悪両極端の勧善懲悪物語と正反対の画期的映画。
人間は完全な存在ではなく、特に心の中は不完全で誰にでも悪も有り善も有り、
状況により悪が強く出たり善が強く出たりするもの。
人間の善悪の状態をあるがままに捉えた脚本で、大変素晴らしい。

2-2:
こう考えると、ロケ地の選択の巧さも分かります。

草が育つ程度には雨が降り農業や牧畜が出来る土地

人が暮らして行ける

人が集まる

色々な人がいる

善悪の程度も人により違う

逆に考えると草も育たない砂漠は勧善懲悪の西部劇には相応しいロケ地です。

2-3:
電気と明かりが無いのも、人の心の闇と暴力への恐れを暗示しているとも捉えられます。


3:
さて、ロケ地の解釈を続けると…
開拓途中の町で、
電気、水道、ガス、下水、ゴミ処理、舗装道路、通信放送等近代文明の設備恩恵が無く、
自然を少々引っ掻いた程度の人間文明。
人権尊重と平等、法治が始まったばかりの状態。

途中、途上、
なんですな。

実際の歴史ではこの後も、自然科学、工業、産業が発展していくんですが、
人間自身の心の方はどうでしょう?

相変わらずの暴力、「力は正義なり」の世界、変わっていません。
改善されていません。

緑豊かな地には程遠く(→「緑豊か」が「善」「良」ならば)、闇が支配する夜。

この映画が作られたのが1992年。
前年1991年に湾岸戦争終結。
しかしアメリカは1992年、ソマリアへ派兵。

そう、相変わらずアホで暴力でしか問題を解決出来ない人間を表しています。

発展途上なのか、進歩改善しないのか、どちらでしょう?


4:
また、雨の中ビッグウィスキーに着いたウィリアムは発熱し、悪夢に襲われます。
明らかなcombat fatigue(=戦闘神経症)、PTSD(post-traumatic stress disorder,(心的)外傷性ストレス障害)。
ロケ地よりも、この脚本の方が戦争を表してますな。


5:
まとめ

人間の心に有る善と悪、その状態はどちら一方ではなく「灰色状態」。
そして映画の舞台となった1880年から変わらぬ暴力と戦争で問題解決する人間。

はたして人の心は発展途上、発展中なのか、
それとも進歩改善しないのか?

こういう極めて真面目で真っ当な問題を考えさせる映画。
戦争好きなアメリカでこの映画がアカデミーの作品賞を獲ったのは、アメリカの良心の表れか?
それとも単に湾岸戦争で戦争に嫌気が差しただけか?

中々の出来の佳作です。


6:
この映画を日本で2013年にリメイクしましたが、舞台を日本にするとかなり無理が有るのがお分かりかと。
西部劇の舞台となる開拓期と開拓地、これが有るのは明治の北海道くらい。
武力と暴力で問題解決していた時代というと、戦国時代が最新。
西部劇は時代の流れを暴力の象徴でもある銃の新旧で表せますが、日本では何で表すんでしょう?
駄作、失敗作になる可能性が高そうですゾ(溜息)。



タグ クリント・イーストウッド ジーン・ハックマン モーガン・フリーマン 許されざる者



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テーマ : アメリカ映画
ジャンル : 映画

『ミスティック・リバー』

★簡単な紹介

○公開
2004年1月10日

○上映時間
2時間18分

○スタッフ
原作:デニス・ルへイン
脚本:ブライアン・ヘルゲランド
演出:クリント・イーストウッド
撮影:トム・スターン
音楽:クリント・イーストウッド
プロデューサー:クリント・イーストウッド、ジュディ・ホイト、ロバート・ロレンツ

○出演
ショーン・ペン(ジミー・マーカム)
ティム・ロビンス(デイブ・ボイル)
ケビン・ベーコン(ショーン・ディバイン)


★評

1:
いや、これまた重い話で…
それでも、最後まで飽きさせないで見せる力が有る映画。

観終わった後に昇華とか爽快感とは無縁の映画。

救い様が無い悲劇で、後味も悪い。

『高校教師』や『永遠の仔』と同じ系列の映画。


2:
ジミー(ショーン・ペン)が最後にやった様な事、我々堅気の人間が知らないだけで、結構有るんだろうなぁ…

あーだ、こーだ、書く気が湧かないある意味非常に強力な映画です。



タグ クリント・イーストウッド ショーン・ペン ケビン・ベーコン



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テーマ : アメリカ映画
ジャンル : 映画

『ミリオンダラー・ベイビー』

★簡単な紹介

○公開
2005年5月28日

○上映時間
2時間13分

○スタッフ
原作:F.X.トゥール
脚本:ポール・ハギス
演出:クリント・イーストウッド
撮影:トム・スターン
美術:ヘンリー・バムステッド
音楽:クリント・イーストウッド
プロデューサー:ポール・ハギス、トム・ローゼンバーグ、アルバート・S・ラディ

○出演
クリント・イーストウッド(フランキー・ダン)
モーガン・フリーマン(エディ・スクラップ=アイアン・デュプリス)
ヒラリー・スワンク(マギー・フィッツジェラルド)
ルシア・ライカー(青い熊のビリー)


★評

1:
演出なんぞから…

1-1:
HIT PIT GYMの壁に掛かってる戒めの言葉。
Winners are simply willing to do what losers won’t.
勝者とは敗者がやろうとしない事を単にやっているだけだ。

1-2:
Mo Cuishla
「愛する人よ お前は私の血」
…ゲール語なんか、分かんないよなぁ。

1-3:
フランキーとマギーが着るガウンの色が緑。
マギーの姓がフィッツジェラルド
Fitzgerald
JFKのFはFitzgerald。
アイルランド系の名前。
Emerald Isle
=Ireland
アイルランドは「エメラルドの島」とも呼ばれています。
エメラルド=緑、
だからガウンの色はミドリ。

1-4:
青い熊
Blue Bear
音が似ているのが、
Bluebeard
青髭
参考→ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E3%81%B2%E3%81%92
次々に嫁さんを殺していった金持ち伝説ですから、卑怯で強力な悪役敵役ボクサーに相応しい名前。


2:
希望と絶望、決意と責任、家族と愛情、絆の物語です。

2-1:
前半、マギーの事故までは照明を減らし明暗を明確にし、際立たせています。
顔半分に光りを当て残りを影の中に入れるカットが多い。
色々解釈出来る演出で、まぁ、心が半分満たされていない事の象徴でしょう。
マギーとフランキーの幸せとは言えない家庭環境の象徴で間違い有りません。
そこを埋めるのが、この映画の舞台になるボクシングです。
それがよく分かるのが、ボクシングの試合で、眩い照明の下でやってますからね。

また明暗の対比が強い事は、荒々しい雰囲気を漂わせ、主人公の心の傷を暗示しています。

更に昼間なのに照明が必要なボクシングジムと言う事は、ボクシングで成功する事の難しさを表してるとも解釈出来ます。

2-2:
そして、後半。
ボクシングを失った主人公二人はどうなったか?
これも照明で表しています。
入院したマギーと世話をするフランキー。
同じ昼間のカットでも病院の中は照明が不要で明るい。
トレーナーとボクサーだった二人の関係が、互いを認め必要な人間的な親密的な関係に変わりました。
心を互いに満たしているのです。
2人の年齢差から親子の関係になりました。

2-3:
そして最後の場面へと行きます。
早朝の設定にし、再び明暗の対比を強くしています。
マギーの実の家族は何もやらず、責任放棄。
代わりにフランキーがやりました。

親は子共に対して責任を取る。
自分がやった事に言い訳はしない。
全ては自分の責任。

フランキーがやった事には賛否両論が有りどちらの意見も正しい。
重要なのはその決意と弁解しない潔さ。
その元に有るのが、愛情。

…やっぱりイーストウッドって穏健だよね。単なる拳銃をぶっ放しているだけのアクションスターではないわい。

3:
マギーを演じたヒラリー・スワンクが見事ですなぁ。
まず、僧帽筋、広背筋、三角筋に筋や影が出来て、ちゃんと発達してるもんねぇ。
ボクサーらしい体つきになってるし、戦ってる時もボクサーらしい。
演出も巧く最初はTシャツとか着せて体や腕の筋肉を見さないんです。
ある程度練習のカットを続けてからシャツを脱がせ筋肉を見せる賢い演出(^.^)。

表情も素晴らしい。
最初の方の何とかボクサーで成功したいと思ってる時の必死さ、
試合中の顔付き、
物語後半の打ちひしがれた表情、
鎮静剤を投与された時の虚ろさ、

嘆息の溜息が出る素晴らしさ(溜息)。

日本なら中谷美紀や宮崎あおいがこういう表情は出来るだろうけど、ボクサーの体つきになれるか?

4:
映画の構成も非常に巧み。

前半のボクシングなんか、最高。
女主人公マギーが成功するのは分かってますが、それでも、練習を重ね実力を付け、
試合に勝ち実力に磨きを掛ける流れ、やはり観ていて楽しい。
興奮します。

そして、後半の沈痛な場面へ。
単なる重苦しい場面にならないフランキーに自分の気持ちをぶつけるマギー。
言葉には出さねどマギーに尽くすフランキー。
素っ気無いですが、非常に現実的で写実的な愛情に満ちた場面です。
非現実的な甘過ぎる馬鹿馬鹿しい愛情表現は有りません。

5:
欠点は、次の二点が弱い、少々説得力に欠けてます。

5-1:
まず、マギーの悲劇。
敵役の青い熊が卑怯過ぎます。
あれだけ汚い真似を試合中にしていたらマギーを戦う前に失格、ライセンス剥奪になるでしょう。
更にマギーの悲劇では業務上過失傷害罪で訴えられでしょう。

5-2:
最後のフランキーのマギーに対する行為。
写実的な演出ではなく象徴的だと分かっていますが、納得しがたい。
フランキーの行為が現実的過ぎるんです。
あそこは無くても十分分かるはずです。

6:
まぁ、マギーの悲劇は誰にでも起こり得る事で他人事では有りません。
いつも心の隅に意識しておいた方がいい。

7:
佳作です。
面白いとは簡単には言いにくい映画ですが、観ても決して損にはならない映画です。



タグ クリント・イーストウッド ヒラリー・スワンク モーガン・フリーマン ミリオンダラー・ベイビー



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テーマ : アメリカ映画
ジャンル : 映画

『ダーティハリー5』

★簡単な紹介

○公開
1988年9月23日

○上映時間
1時間31分

○スタッフ
脚本:スティーヴ・シャロン
演出:バディ・ヴァン・ホーン
撮影:ジャック・N・グリーン
音楽:ラロ・シフリン
プロデューサー: デヴィッド・ヴァルデス

○出演
クリント・イーストウッド(ハリー・キャラハン刑事)
パトリシア・クラークソン(サマンサ・ウォーカー)
リーアム・ニーソン(ピーター・スワン)


★評

1:
おやおや、全二作がつまらんかったので、シリーズ五作目は面白い。
特にラジコンの車を使うアイデアは中々の傑作。
ここのシークウェンスの緊迫が非常感に宜しい。
また、上映時間も短め(1時間31分)なので話が間延びせず巧く行っています。

2:
それでもキャラハン刑事がチャイナタウンの食堂の強盗を「始末」するシークウェンスでは、
キャラハン刑事が強盗犯を逮捕する様には見えません。
相手に先に銃口を自分に向けさせ自分が発砲出来る言い訳を作ってるようにしか見えない脚本と演出。

3:
しかし、全体的に無駄が無いのでキャラハン刑事の少々異常と思える行動が気にならず、
最後迄集中力が切れずに観られる面白い映画になったのも間違いありません。



タグ ダーティハリー クリント・イーストウッド M29 スミス ウェッソン


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テーマ : 映画レビュー
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『ダーティハリー4』

★簡単な紹介

○公開
1984年4月14日

○上映時間
1時間57分

○スタッフ
脚本:ジョセフ・スティンスン
演出:クリント・イーストウッド
撮影:ブルース・サーティース
音楽:ラロ・シフリン
プロデューサー:フリッツ・メーンズ

○出演
クリント・イーストウッド(ハリー・キャラハン刑事)
ソンドラ・ロック(ジェニファー)
オードリー・J・二―ナン(レイ)


★評

1:
何かなぁ、真面目に法律に則って捜査する馬鹿正直なハリー・キャラハン刑事が、変わってしまった(涙)。
やたらとM29をぶっ放す。

キャラハン刑事が発砲しても法的には問題無い様なので、演出が悪いんです。

2:
一番悪いのは、最後。

「被疑者の人権は守っても、被害者の人権はどうなの?」

と言う被疑者を逃がすキャラハン刑事。
観衆はこの登場人物が犯人だと分かっています。

法律を施行する人間が高い確率で違法行為に関わっていると思われる人間を見逃していいのでしょうか?
警察官の職業倫理に反している可能性が有ります。

地に落ちたハリー・キャラハン刑事であります(溜息)。

3:
オマケに、最後に有る敵役が死ぬカット。

趣味の悪さ全開。

どうしたんでしょう、イーストウッド?



タグ クリント・イーストウッド ダーティハリー M29


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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

『ダーティハリー3』

★簡単な紹介

○公開
1976年12月25日

○上映時間
1時間36分

○スタッフ
脚本:スターリング・シリファント、ディーン・リースナー
演出:ジェームス・ファーゴ
撮影:チャールズ・W・ショート
音楽:ジェリー・フィールディング
プロデューサー:ロバート・デーリー

○出演
クリント・イーストウッド(ハリー・キャラハン刑事)
ブラットフォード・ディルマン(マッケイ課長)
ティン・デーリー(ケート・ムーア)


★評

1:
何か、つまんないですね。
市長と殺人課課長の市長選とメンツに執着する態度にキャラハン刑事が反抗するのはいい。
新たな相棒が女性になったのも特に問題ありません。

問題は敵役が中途半端に残忍で、強くない事。

キャラハン刑事の愚直に法律を守る人物描写が消え、単なるアクション映画になってしまいました。


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『ダーティハリー2』

★簡単な紹介

○公開
1974年2月9日

○上映時間
2時間2分

○スタッフ
脚本:ジョン・ミリアス、マイケル・チミノ
演出:テッド・ポスト
撮影:フランク・スタンリー
音楽:ラロ・シフリン
プロデューサー:ロバート・デイリー

○出演
クリント・イーストウッド(ハリー・キャラハン刑事)
ハル・ホルブルック(ニール・ブリッグス警部補)
デビッド・ソール(ジョン・デイヴィス)


★評

1:
この映画はロードショーを観ました。
エラい大昔の事(遠い目付き…)
当時は本物のS&WM29をカラーで見られるのは映画しかなかったからなぁ。
今はYouTubeで空砲じゃなくて240grJHPを6連射してるのをいつでも見られるし、円高のおかげでアメリカ行くのも簡単になったからなぁ。
オマケにこの映画の冒頭で世界最強の拳銃と言ってるけど、今じゃ44Magより強力な500S&WMagを撃つS&WM500が市販されてるからなぁ。

2:
さて、この映画でもキャラハン刑事は法律を守る正義の味方です。
正義と法律を天秤に掛けると、必ず法律を守る正義の味方です。
銃撃戦の時も相手が撃ってから自分も打ち返す真面目な正義の味方です。

法が裁けないから自分で処刑したりしません。
こういう事をやるのは、今回は敵役の警官達です。
相変わらず生真面目で馬鹿正直なハリー・キャラハン刑事です。

昔は分かりませんでしたが、最近改めて観ると非常に好ましい人物設定なのが分かりました。

やはりイーストウッドは銃に関しては穏健派であり、更に推し進めると軍や戦争についても穏健派なのが分かります。

3:
この映画でいいのは、キャラハン刑事が相手が撃ってから撃ち返してるのに暴力刑事と非難されてる点。
しかも、上司が弁護してません。
警官が銃を撃つと言う現象だけを取り上げ、状況を調べようともしないし、撃った理由も調べない無責任な、そして誰かに利用されていると思われて仕方ない報道陣を表しています。
警察の記者クラブで発表される事を垂れ流すだけの日本のTV、ラジオ、大手全国紙と大して変わらんね。

4:
でも、この映画の犯人グループは、アホ過ぎです。
ネタバレになりますが、奴らは警官なのに証拠を現場に残す、残す、残す(溜息)。
靴の跡、タイアの跡、S&WM76の空薬きょう…
白バイ警官でヘルメットとサングラスで人相を隠してるだけで十分のはずありません(涙)。
それから、リボルバーにサイレンサー(→正確に言うと音を消すことは出来ず音量を下げるだけだから、「サウンド・サプレッサー」が正しい)
を使って銃声を小さくしていますが、これは現実的には絶対不可能。
なぜなら銃身の後端と弾が入るシリンダーの前面の間に隙間が有り、そこから発射ガスと音が漏れるから。
ま、この手の間違いはこの映画だけではありません。

5:
終盤、逃げるキャラハン刑事がウェストパシフィック鉄道の貨物駅のプラットフォームへ車で突進しますが、
そこで積み込み中の物がレタス。
『エデンの東』だゼ(笑)。

6:
銃の事を。
6-1:
屋外射撃場のシークウェンスはSFPDの射撃場を実際に使いました。
キャラハン刑事とデイヴィス警官が実戦射撃をやるセットもそこに作られ、少なくとも1979年迄は残されていました。
(→参考、月刊Gun誌1979年8月号。因みに、この二人にマグナムリボルバーの使い方を指導したビル・ラングロイ警官がそこでモデルをやってます)
(また、翌9月号ではラングロイ警官が実戦のコンバットシューティングのデモンストレイションをやってます)
6-2:
今回キャラハン刑事と白バイ警官達がリボルバーの弾を6発一度に替えてますが、あのお道具を「スピードローダー」(=「リローダー」)と言います。
その存在が日本の銃ヲタクに広く知れ渡ったのは間違いなくこの映画以降の事でしょう。
6-3:
終盤ブリッグス警部補にキャラハン刑事が弾を捨てろと言われ、この時スピードローダーにセットされた44magが写ります。
そしてこの弾を捨てさせるカットに、室内射撃場でキャラハン刑事が白バイ警官達に44Magの「軽装弾」を使ってると言った台詞が繋がってます。
今回観直して気付いたのですが、これ程巧く銃を描写した映画やドラマは観たことありません。
ではその説明を。

キャラハン刑事が捨てた弾は、弾頭の色と形状から鉛の鋳物の「セミワッドカッター」であるのが分かります。
この弾頭は薬きょうに近い部分に段差を付け紙の標的にキレイに丸い穴を開け、弾着点を分かりやすくした練習や競技用の弾頭です。
鉛だけの弾頭は、鉛を芯にして銅のジャケットを被せたジャケット弾よりも発射ガスの高温で溶けやすいので火薬を減らし低速(=低威力)にして使います。
人間みたいに皮膚が薄く弱く、皮下脂肪も少ない動物には鉛より硬い銅のジャケットを使った弾頭は必要無く、鉛の弾頭で十分な殺傷力があります。
また鉛の弾頭にはセミワッドカッターの「本家」に当たる「ワッドカッター」も有り、これは薬きょうに全て埋まります。
競技ならあまり問題はないのですが、実戦の場合、薬きょうの先端から弾頭が出ていて、しかも徐々に細くなっているセミワッドカッターの方が有利になります。
弾頭を含めた弾の先端がシリンダーに開けられたチェンバーよりかなり細いので入れやすくなるからです。
実戦の場合、リボルバーで弾の詰め替え中は銃を撃てないので丸腰の時間を出来るだけ短くしたいからです。

これでお分かりになったと思います。
キャラハン刑事は台詞通り「軽装弾」を使い、しかも実戦で弾の詰め替えの不利を少しでも少なくする弾頭を選んでいます。
実戦に即した名射手であり、非常に優秀な刑事である事をこのたった一つのカットで表しています。

素晴らしい。見事です。

セミワッドカッターを使わせたのは、SFPDの現職だったビル・ラングロイ警官に間違いないでしょう。

7:
さて、今回もキャラハン刑事はあまりスーツを着てません。
どんなもんを着てたかまとめると、

a:ハイジャック犯を一人で始末する前
→へリングボーン(灰色、黒のエルボーパッチ付き)+灰色パンツ
b:プールでの大量殺人の次、チャーリーの別居している奥方の家、荒物スーパーの強盗退治、
→茶色ジャケット+タンパンツ
c :黒人の売春元締め殺害の次、自宅に戻った時、死体置き場、
→へリングボーン(灰色、黒のエルボーパッチ付き)+多分タンパンツ
d:弾頭の鑑識、黒人ヒモの車を使った検証、パランシオの監視役、
→ダークスーツみたい(→パンツ映らず、色は多分無彩色)
e:チャーリー、ガズマン殺害の次、ブリッグス警部補の部屋、
→へリングボーン(灰色、エルボーパッチ無し)+タンパンツ
f:空港でチャーリーの遺族をデイヴィス警官と見送る、
→ダークスーツ(→多分無彩色)
g:射撃大会後弾頭を検査の次、ブリッグス警部補にライフルマークを見せる、
→へリングボーン(灰色、黒のエルボーパッチ付き)+濃灰色パンツ
h:デイヴィスとスィートを引き連れパランシオのアジトで大捕り物、犯人グループがついにキャラハン刑事に接触、郵便受けに爆弾発見、
→へリングボーン(灰色、エルボーパッチ無し)+タンパンツ
I:続いて、犯人グループと対決、最後迄
→へリングボーン(灰色、エルボーパッチ無し)+タンパンツ、ネクタイ無し

ジャケットには意味を持たせてないと捉えていいでしょう。
スーツの方は、これは有りますな。
「d」と「f」で警察官が関わっているかもしれないとキャラハン刑事は思います。
ダークスーツは、日本とは違い喪服にも使えますますから「別れ」を意味します。
何と「別れ」でしょう?
「警官を信じる事」です。
「d」のパラシオンの監視は「h」の銃撃戦になった原因のタレこみに繋がります。

タグ ダーティハリー クリント・イーストウッド S&WM29 44マグナム ハリー・キャラハン


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『ダーティハリー』

★簡単な紹介

○公開
1972年2月26日

○上映時間
1時間42分

○スタッフ
脚本:ハリー・ジュリアン・フィンク、R・M・フィンク、ディーン・リーズナー
演出:ドン・シーゲル
撮影:ブルース・サーティーズ
音楽:ラロ・シフリン
プロデューサー:ロバート・デイリー

○出演
クリント・イーストウッド(ハリー・キャラハン刑事)
アンディ・ロビンソン(サソリ座の男)
ジョン・ヴァーノン(市長)



★評

1:
“Play misty for me”って御存じかな?
これを知ってる方はかなりのハリウッド映画通か、イーストウッド狂です。
1971年製作イーストウッド初監督作品『恐怖のメロディ』の原題です。
これが冒頭、キャラハン刑事が一人で銀行強盗一味を確保するシークウェンスの中で出てきます。
ホットドッグ屋(とハンバーガー、アップルパイ)“burger den”と同じブロックに有り、キャラハン刑事が入るカットで上手(画面右側)に映ります。
また強盗犯に向かって歩いて行くカットにも映りますが、これはよく分かりません。

さて、なんで分かったかと言うとDVDの特典映像に書いてあったから(笑)。

『恐怖のメロディ』は大昔、TVで観ましたなぁ(…遠い目付き…)

2:
以前にも書いた通り、私は元銃ヲタクです。最近は「ヲタク」と言う程好きじゃないし、熱心でもありません。
1970年代の銃ヲタクにとって『ダーティハリー』は大藪晴彦の小説と月刊Gun誌と並び聖典でした。
なんと言っても助演がS&WM29の6.5インチ銃身付き、口径44マグナムでしたからねぇ。
細身で無駄の無い外観に南米産のゴンカロアルヴス材の木目と色が美しいグリップ付きで、超カッコ良かった(^.^)。
最後に観たのは、この映画もよく覚えてなく、ビデオだったのは間違い無し。
でも映画が公開された時のポスターは記憶に有ります。最後のシークウェンス、茶色のスーツを着て両足を開きM29を構えてるあの写真。

3:
、と言う訳で、超久し振りに観たら…、
『燃えよドラゴン』と同じ位良く出来ていました。

4:
まず、音楽の入れ方が最小限で映画自体が扇情的な映画になっていません。
これは、意外でした。
キャラハン刑事が一人で銀行強盗一味を始末するシークウェンスや「サソリ座の男」に振り回されS.F.市街を走り回るシークウェンスは、
音楽が入らず実に地味で非常に心地いい。
警察の仕事の地味さを表現し実に好ましい。

5:
また、キャラハン刑事が銃を撃つ時も、相手が撃ち自分か周りに市民に被害が及ぶ恐れが明らかになってから撃ちます。
たとえキャラハン刑事のが最初に撃つ時も、「サソリ座の男」が逃走しようとしている時です。
日本の警察系ドラマや映画みたいに怪しいから警官が撃つとか、時代劇でよくある問答無用や無礼討ちなんかは有りません。

最後に「サソリ座の男」を打ち殺す時も相手に先に撃たせます。

6:
しかしながら、「サソリ座の男」を逮捕した時は、合衆国憲法修正第5条、第14条で規定されている
「法の適正な過程」
(この場合は被疑者の権利、ミランダ警告をやらなかった)を守らなかったので「サソリ座の男」は無罪放免になってしまいます。
ここがこの映画の最も素晴らしい所です。
正義にためなら法律を無視しても許されるはずも無く、結果が手段を肯定する事も有りません。
日本の警察系ドラマや映画と全く違う所です。

7:
最後は当然キャラハン刑事が「サソリ座の男」をS&WM29の6.5インチ銃身付きで撃ち殺しますが、
最後のカットが中々宜しい。
警察バッジを投げ捨てます。
これは色々解釈出来ます。
法を守るばかりで正義を守れない警察に愛想を尽かした、
とか、
キャラハン刑事に好意的に解釈すれば、数々の違法捜査の責任を取り辞職した、
とかね。

8:
もう一つ今回気付いたのが、全編に亘り知的な苦笑や微笑が散りばめられている脚本。
ウィットに富んでいるんです。
情的、感覚的なユーモアではなく、知的な乾いたウィットです。
上司やお偉方に対する苦情や反論を笑いに転化させています。
この辺も日本の警察系ドラマや映画と全く違う点です。

9:
さらに、キャラハン刑事はダークスーツを着てません。
ジャケットにパンツ、中にはヴェストかセーター。
着ている物だけで、普通の刑事でない事がよく分かる演出。

10:
勧善懲悪の作品ですが、
『太陽にほえろ!』とか『西部警察』だけでなく、『水戸黄門』等とも全く違う作品で、
非常に穏健、穏当、順法精神に満ちた作品です。
警察と言うのは、法律や倫理、道徳に縛られ単純に正義のために「力」を行使出来ません。
以前にも書いた通り、悪が強いのはルールと言うものを守らないからです。
警察は正義と言う結果のために、法律と言うルールに従わねばならず、どんな手段を使ってもいいと言うものではありません。
「法の適正な過程」を守らなければ、警察自体も悪になり悪の犯罪を立証出来ません。
悪に対し手枷、足枷を付けたまま戦わなければならないのです。
「法な適正な過程」と「順法精神」を守る事とそのために正義が疎かになる恐れを描いたのが『ダーティハリー』ですが、
この点を受け継ぎ発展させた作品は有るでしょうか?
例えば、違法行為をして誘拐犯を逮捕し人質の命を救ったものの、そのために告訴される警察官の話とか有るでしょうか?
こんな映画は日本で出来るはずも無く、ハリウッド映画に期待してます。


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『グラン・トリノ』

★簡単な紹介

○公開
2009年4月25日

○スタッフ
原案:デイブ・ジョハンスン、ニック・シェンク
脚本:ニック・シェンク
演出:クリント・イーストウッド
撮影:トム・スターン
音楽:カイル・イーストウッド、マイコォ・スティーヴンス
プロデューサー:クリント・イーストウッド、ロバート・ロレンツ、ビル・ガーバァ

○出演
クリント・イーストウッド(ウォルト・コワルスキ)
ビー・バン(タオ・ヴァン・ロー)
アーニー・ハー(スー・ロー)


★評
とある家電量販店のDVD3本\3,000の最後の1本。
私にとってイーストウッドと言えば、S&WのM29の6.5"を持った40代のハリー・キャラハンのままだからなぁ・・・

1:
ウォルト・コワルスキは朝鮮戦争帰還兵だけあって持ってる銃はグラン・トリノより古いM1ガランドとコルト・ガバメント。
グラン・トリノに金を掛けていたから両方ともガン・ショーなんかで手に入れた軍放出品でしょう。
M1ガランドとコルト・ガバメントは鉄と木で出来た2世代前の銃ですから、古さとその古さを変えない頑固の象徴です。

2:
ウォルトが朝鮮で所属していたのが第一騎兵師団。第一騎兵師団といえば『地獄の黙示録』でイロコイスに乗って海岸の村をM16やM60で撃ちまくってましたが、
この映画でウォルトは1発しか撃ってません。それもガレージが暗くて躓いたから。
それに比べ、スモーキィ(ソニィ・ヴュー)とスパイダァ(ドゥーア・ムーア? Doua Moua)はイングラムやウーズィまでフルオートで撃ってます。

3:
クリント・イーストウッド、冒頭から体の動きがイマイチぎこちない老人になり中々宜しい。
常に眩しそうに眉をしかめ勝ちなのは、若い頃から変わってません。
それに、ハンサムなのも変わらず。

4:
この映画、音楽が殆ど入りません。
入るのは、タオがウォルトのために「働く」場面、ウォルトがスモーキィの家で「問題を解決する」場面、最後の場面からエンド・クレジット、位のもの。
この音楽の使い方は私の好みです。
だから中々宜しい(笑)。

5:
さて、ウォルトのタオのための最後の「問題解決」法。
朝鮮での行為の償いに間違いありません。
武士道で育った侍です。
腹の座り具合、覚悟が侍です。
古い銃が象徴する様に「問題解決」法が古来からの、武士道を思い出させる方法なんです。
そして、『硫黄島からの手紙』での栗林中将(渡辺謙)のコルト・ガバメント(=45オート)の扱い方へと繋がってますな。
(参考→ここ)
「問題解決」について考えると『タクシー・ドライバー』のトラビスは、やはり、いかれてます。
『タクシー・ドライバー』の焼き直し女版としか考えられない『Mother』の脚本を書いた坂元裕二は『グラン・トリノ』を観なかったんだ。

グラン・トリノ』と『硫黄島からの手紙』に限って言えば、イーストウッドは、戦争、暴力、銃、問題解決などについて真っ当で穏当な考え方をしているのが分かります。


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テーマ : アメリカ映画
ジャンル : 映画

『硫黄島からの手紙』

★簡単な紹介

〇公開
2006年12月9日

〇スタッフ
脚本:アイリス・ヤマシタ
演出:クリント・イーストウッド
撮影:トム・スターン
音楽:カイル・イーストウッド、マイケル・スティーヴンス
プロデューサー:クリント・イーストウッド、スティーヴン・スピルバーグ、ロバート・ロレンツ

〇出演者
渡辺謙
二宮和也
伊原剛志
加瀬亮
中村獅童


★評

「画竜点睛を欠く」。
もう一工夫欲しかった。

1:「画竜点睛」の部分
主演はどう見ても渡辺謙じゃなくて二宮和也でしょう、この映画。
二宮和也は予想通りの巧さ。普通の若者を違和感無く演じてます。
脚本が良い。日米両軍に善人と悪人と普通の人がいるのが良い(日本側を描いたので、米国側には善人は出ません)。変な日本人が出ないのが良い。

映像は『ジョニーは戦場へ行った』型(現在が白黒、過去がカラー)。戦争の場面は色を飛ばし白黒に近くし、回想の場面がカラー。
戦闘、攻撃、爆撃が始まれば生死が第一で他の事は二の次、それどころじゃない、という事。
熱帯の強い日差しを表わすために色を飛ばしていると思いましたが、違いますね。栗林中将が島民を避難、離島を指示する場面がカラーなので分かりました。
色が戻るのが炎に追われる時と戦争の最後の場面(→定番の夕陽を使い硫黄島の戦いの終わりを示しています)。生死に拘らず戦場を離れなければ「色々」なものがある人間に戻れないという事。

栗林中将が滞米中に贈られた45オート、白いグリップに注目。高級将校への贈答用だから象牙。撮影に使ったのはプラスチックでしょう。
白は戦闘中、降伏(=戦わない)を表わしますから、この映画では日米の友好の象徴。
最後の決戦ではこの45オートを使わず軍刀を抜いたのは栗林中将の高潔さ(→この映画の役として。実在の人物としてはよく調べてないので不明としておきます)と、M1ガランドライフルに代表される米国の大量生産に対し精神論で戦った日本の愚昧、蒙昧を表わしています。
日米友好の象徴で米兵を殺す事を潔しとしなかった栗林中将が贈答用45オートで奪った命は己自身のみ。
貴重で美しい象牙のグリップを汚したのが高潔な栗林中将の血。善悪、正邪に関係無く人の命を要求する戦争の残虐、破壊、略奪、無意味、無駄を象徴する血で汚れた象牙のグリップです。

2:「欠く」の部分
し、か、し、です。

ルイス・マイルストンが撮った『西部戦線異常なし』の不思議な迫力にはこの映画も敵ってません。蝶を捕えようとして塹壕から手を伸ばすと狙撃兵に撃ち殺される最後の場面は有名だし、確かに衝撃的です。
しかし砲撃で出来た穴を飛び越えて行く兵士達を下から撮った場面は、更に衝撃的で異様な迫力があります。
この場面は穴にいる主人公のポールの視線を表わしていますが、私には戦死した兵士の視線を表わしている様にも見えるんです。大義名分のために死にながらも、目を閉じてやる人間さえいません。
つまり死んだ人間の瞼を閉じるという事は冥福を祈る事。安らかに眠ってくれと祈る事。単なる歩兵は人間ではなく生きている駒か歯車にすぎません。一兵士の命には何の価値も無いんです。
ポールだけでなく戦死した兵士の視線も表わしていれば、命を軽視し人間の最後の尊厳さえ認めない戦争の残虐さをこれ以上簡潔に、また見事に表現した場面を観たことありません。

硫黄島からの手紙』は全体に確かに良く出来た映画です。だからもう一工夫欲しかった。



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プロフィール

CYPRESS

Author:CYPRESS
最近好きな女優は杉村春子と中谷美紀。
好きな監督は黒澤明と張藝謀。
気になる監督は堤幸彦。
山田孝之の実力が分かってきました。

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