広末版『愛と死をみつめて』その12
第一夜その3
1:
その他の人々の位置
立ち位置で人々の関係を表すのは、このドラマも例外ではありません。
ミステリーではないので力関係とかではなく、気持ちの変化や思いやり等を説明する演出です。
1-1:
冒頭、綿引潤子さん宅を探すマコさん。
左(上手):親切な婦人警官(吉岡美穂)
右(下手):マコさん
…「何にも言えないけど、付いて来るのはそちらの勝手ですから」と婦人警官。
1-2:
27分付近。
退院後、実家に帰ったマコさん。
1-2-1:
ミコさんからの手紙を渡すお母さん(室井滋)。
ここでは、
左(上手):お母さん
右(下手):マコさん
…子供を心配する母親。
1-2-1:
お母さんに「かしこ」の意味を聞くマコさん。
左(上手):マコさん
右(下手):お母さん
…親には言えない事が出来てきた息子であります。
1-3:
31分50秒付近。
ミコさんが両親に合格を伝える場面。
左(上手):お父さん(大杉漣)
右(下手):お母さん(伊東蘭)
…力強い一家の長としての男が沢山いた時代。
1-4:
32分25秒付近。
阪大病院で重光医師(ユースケ・サンタマリア)がミコさんの両親に病気と病状を説明する場面。
左(上手):重光医師
中央:ミコさんの頭のレントゲン写真
右(下手):お父さん、お母さん
…当然この位置。
…そして、ミコさんの顔を半分切り取ると言う重大な事を決定する医師の重責も表しています。
1-4-1:
ミコさんの両親と重光医師の間に有るテーブル。
患者と医師、素人と医師の間に横たわる物の象徴です。
重大の事をしなければならない人間とそれを見守るしかない人間の間の深淵の象徴。
この「横たわる物」を作り出したのが、テーブルの奥にあるレントゲン写真、軟骨肉腫です。
事実を伝えるだけでも大変な重圧が有るのは間違いなく、その事実をこれから実行する重圧も有ります。
患者側の苦悩、苦痛も有りますが、医師側の方にも患者の命を預かる責任と苦悩が有る訳です。
患者側は家族、友人、知人、恋人と苦悩を分かち合える人間の数が多いですが、
医師側はどうしても病院と言う組織上、どうしても主治医に代表される責任者が一人で背負わねばなりません。
1-4-1:
そして、重光医師の後の解剖図が耳。
「大島さん、みち子さんの件について、心して聞いて下さい」
、と強調ですな。
1-5:
48分付近
レントゲン治療後、ミコさんと重光医師。
左(上手):ミコさん(→半袖ブラウス、ベージュ、紺地に白水玉のスカート)
右(下手):重光医師
…生真面目な先生をからかうミコさん
1-6:
続いて
49分付近
左(上手):中田慶子
右(下手):ミコさん
…心を許している親友だからこの位置になります。
…この時点ではマコさんとはまだ心を開いてません。
…ここで初めてウサギのヌイグルミの「ピョン」をミコさんが手にし、話題になります。
1-7:
52分付近
竹井看護婦(平岩紙)にマコさんの手紙を読むミコさん。
左(上手):竹井看護婦
右(下手):ミコさん(→水色パジャマ)
…看護婦の竹井さんにも心を開いているのに、マコさんには…(笑)。
…竹井さんの質問に答える時は、位置が逆になります。
1-8:
55分付近
ミコさんの軟骨肉腫が大きくなり、ミコさんの両親に手術を勧める重光医師。
左(上手):ミコさんの両親
右(下手):重光医師
…お二人はどうされますか、よく考えてください、と強調。
…つまり、ミコさんの肉腫は既に手術で取り去るしか方法が無い位進行し、重光医師の意見は手術をする方。
…でも、顔が半分無くなるので強くは勧められません。
1-9:
56分付近
続いて、帰りの車中のミコさんの両親。
一人づつ映るヘッドショットになります。
意見が対立する程話が進んでいません。
まだショック状態が続いていると言う事です。
それでも、お母さんの背中側からのカットではお父さんの顔が半分映りますから、
やはり父系家族であり、お父さんの意見が尊重されるでしょうと暗示しています。
1-10:
58分付近~1時間2分
重光医師が病室でミコさんと大事な話をする。
1-10-1:
まずカメラが窓の外から二人を捉え、上から下へ移動。
これは、明らかに重光医師の心の動き、この場合は重大な話をする決意、同時に腹が据わって行く様子を表しています。
右(下手):重光医師
中央:ピョン
右(下手):ミコさん(→グレイ地に白の水玉のパジャマ)
…ピョンが人目に付く場所に置かれるのは、初めて。
…重大な事をミコさんに教えるのが重光医師ですから、当然この位置。
1-10-2:
話しが進み、左目が無くなり、鼻や口も整形しなければいけないかもしれないと重光医師。
左(上手):ミコさんを背中から
右(下手):重光医師
…重光医師は、命を救う事を第一に考え手術を勧めますが、その結果顔の左半分を失う事になりますから、決断を下すのはミコさんの役目になります。
…ミコさんを背中から映してますから、ミコさんの方に決定権がまだ移ってません。
…この構図は、それよりも、顔の半分を失う事実に衝撃を受け重光医師と意見を交わしたり出来る状態ではない事を表す方が大きいでしょう。
1-11:
続いて重光医師が医局に戻りヘタリ込むも、417号室を頻繁に覗いてくれと頼む。
左(上手):重光医師
右(下手):竹井看護婦他スタッフ
…緊張で疲れ切っても指示を出せる重光医師。
1-12:
1時間3分付近
阪大病院屋上、心配した中田慶子がミコさんの元へ急いで駆け付ける。
左(上手):中田慶子
中央:ミコさんが抱いているピョン
右(下手):ミコさん(→グレイ地に白の水玉のパジャマ)
ミコさんの台詞
>私 怖い
>手術なんかしたくない
>顔が半分なくなって どうやって生きていけていうの?
>慶子が… 慶子が来るのがもうちょっと遅かったら―
>私 ぴょんと飛び降りてた
…二人の位置の通り慰めが必要なミコさんです。
1-13:
1時間7分付近
マコさん、ミコさんのお兄さんに会いに行く。
左(上手):マコさん
右(下手):ミコさんのお兄さん
…ミコさんの状態を知りたいマコさん。
階段の踊り場でミコさんのお兄さんが教えようとすると、
左(上手):ミコさんのお兄さん
右(下手):マコさん
…当然この位置。
1-14:
1時間8分付近。
続いて、信濃寮の自室でマコさん、滝沢さんと。
左(上手):滝沢さん
右(下手):マコさん
…事情を知りたい滝沢さん。
…マコさんを心配する滝沢さんで、二人の友情、関係を表してます。
…背景の壁に有る書(、と言うか習字?(笑))が「友情」です。
…ここの草なぎの喋り方、どうにかならんかねぇ(溜息)。
全く感情がこもってない棒読み。
今迄ミコさんの病気について何も知らなかったとは言え、余りにも能天気過ぎた自分に怒ったり、後悔したりするもんでしょう。
そういう心の中が全く現れない無表情の台詞になってます。
全編を通じてこの調子で喋ってますから、「この青年は、本当にミコさんのことを好きなんだろうか?」と視聴者は思わずにはいられず、
ドラマに感情移入しにくく、ドラマの印象を薄くしています。
困ったもんです(溜息)。
1-15:
1時間11分付近
放射線科診察室で、ミコさんと重光医師。
重光医師をからかい、分かった風な事をいうミコさんに対し、
>俺は慣れたくないんだ
>患者の苦しみに 患者が死んでいく事に…
>それに慣れたら医者は終わりだ
左(上手):重光医師
右(下手):ミコさん(→くすんだ淡い緑のブラウス+淡いグレイのスカート)
…この時の照明は上からの斜光。
…重光医師の非世俗的、非金銭的な心を強調する天上的照明。
1-16:
1時間12分付近
睡眠薬を買うミコさん
左(上手):ミコさん(→くすんだ淡い緑のブラウス+白のカーディガン)
右(下手):薬局の店員
…必要書類に名前を書く回数は、4回。
…4件の薬局で買ったようです。
1-17:
1時間13分付近
マコさん、ミコさんのご両親、比佐子さんと会う。
左(上手):マコさん
右(下手):ミコさんの家族
…ご両親を会うのは初めてなので、自己紹介って感じ。
1-18:
1時間17分付近
マコさん、ミコさんのご両親と初対面後、病室の外で再び話す。
左(上手):マコさん
右(下手):ミコさんの家族
…手術の危険性を考えると決心できないご両親。
…それでも、ミコさんには手術をして生きていてほしいと思い、主張するマコさん。
…比佐子さんが女としての恐怖(顔を半分失う、顔を失って生きていく)を主張するカットでは、位置が反対になります。
1-19:
1時間26分付近
ミコさん、お母さんに手術を受ける決心を伝える。
左(上手):ミコさん(→白地に小花柄のブラウス、白のカーディガン)
右(下手):ミコさんのお母さん
…特に言わなくても分かる二人の位置(笑)。
1-20:
赤穂の醸造所、事務所でのミコさんのご両親。
1-20-1:
最初は、お母さんの感慨と言うか、愚痴と言うか、
左(上手):お母さん
右(下手):お父さん
1-20-2:
続いて、
お父さんが、
>昔の話はするな
>泣くな
左(上手):お父さん
右(下手):お母さん
1-20-3:
最後は、お父さんが
>今一番泣きたいのは、みち子や
でも、位置が元に戻り
左(上手):お母さん
右(下手):お父さん
…夫婦で「主」がお母さんの方になってます。
…悲しみに遭った時、涙に暮れやすいのは女性の方。
1-21:
1時間29分付近
阪大病院庭で、ミコさんと重光医師
左(上手):ミコさん(→白地に小花柄のブラウス+ベージュのカーディガン+ベージュ地に茶色格子柄のスカート)
右(下手):重光医師
…ミコさんが死と愛について尋ねます。
1-22:
1時間37分近辺
ミコさんのご両親、海辺でミコさんを思う。
左(上手):お父さん
右(下手):お母さん
…夕方=一つの時間の終わり→ミコさんの手術について気持ちの整理が付いた。
…海辺=出帆=新しい事物の始まり→ミコさんの手術が終わってからの事、将来を考えよう。
…ミコさんの子供の頃を話すのはお母さん。
…ミコさんにまたこの海を見させてやろうと話すのはお父さん。
…お父さんが文字通りの一家の主です。
…最後の背後からのカットで入る枯れ木は柳でしょう。柳はしなやかは木ですから、困難に負けるな、みち子、と言うご両親の口に出さぬ思い。
枯れ木ですが、冬を越え春にはまた芽吹く再生の象徴で、やはり、手術に負けるな道子、です。
1-23:
1時間47分付近
MSWについて、ミコさん、重光医師と共に岡田氏と会う。
左(上手):岡田氏
中央:ミコさん(→白のブラス、ベージュのカーディガン)
右(下手):重光医師
…ミコさんのやる気を表す位置。
…次に陸上の練習を見ながら歩く場面も同じ位置。
1-23:
1時間49分付近
重光医師、自宅で奥さんに思い遣りを見せる。
左(上手):重光医師
右(下手):英子夫人
☆第一夜の人々の位置に関しては、これで終わり。
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