『コレクション展 はじめての古美術鑑賞 -絵画の技法と表現ー』
2016年7月23日(土)~9月4日(日)
根津美術館
HP→http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html
日本画の技法の紹介と言うんで、行ってきました。
他に「書く楽しみ」、「根津青山の軽井沢の茶」の展示もあります。
根津美術館へ今年行くのは、4回目です。
秋に圓山應擧の「藤花図屏風」が展示されるんで、後一回は行きますな。
1:
まずは、技法編
1-1:
たらし込み(たらしこみ)
これは琳派でお馴染み。
一回見ればどういう感じになるか、直ぐ分かります。
滲みです。
塗ったり描いたりした墨や絵具が乾ききる前に、その上に水分がより多い墨や絵具を加える事。
今回は例として、
「老子図」 伝俵谷宗達
「木蓮棕櫚芭蕉図屏風」 伝立林何帛
「四季草花図屏風」 喜多川相説
個人的には、たらし込みと言うと出光美術館の酒井抱一の「八ッ橋図屏風」の橋。
初めて見た時、
絵に信じらない程動きと速さを与えていて、ビックリしました。
同時にカキツバタを意匠化してるとは言え、どう見ても写実表現に入るのに、
たらし込みで描いてる橋がどう見ても抽象表現。
一枚の絵の中に写実表現と抽象表現を入れる(@_@)。
西欧絵画で見たことありません、少なくとも19世紀以前では。
この発想の自由奔放さにも衝撃を受けたものです(^.^)。
1-2:
溌墨(はつぼく)
これは、この間ここ根津美術館で見た技法だし、記事にもしました。
筆に墨をたっぷりつけ、事物を大まかに描く描法。
7世紀の唐では既に完成していて技法だとか。
今回の例は、
「溌墨山水図」 雲渓永怡筆、沢庵宗彭賛
「溌墨山水図」 周徳
「溌墨山水図」 周珍
「瀟湘八景図巻」 狩野常信
野獣派(Fauvisme)でお馴染みのタッチで好きな描写なんで、どの絵も良かった(笑)。
1-3:
外暈(そとぐま)
(=外隈(そとぐま))
白や淡い色のものを描く時、その外側を墨や暗色でボカし(=暈し)、
隈どる方法。
輪郭線の一種と言えない事もありません。
今回の例は、
「白衣観音図」 赤脚子
「富嶽図」 仲安真康
「楊柳白鷺図」
「染付白鷺文皿」 鍋島藩窯
焼き物の世界にもあるとは、予想もしていませんでした。
1-4:
付立て(つけたて)
輪郭線を用いずに、筆の穂の側面を利用し一筆で描き、陰影や立体感を表現する技法。
今回の例は、
「竹狗児図」 長澤芦雪
「花卉図屏風」 松村景文
筆全体に水や薄墨を含ませ、筆の横に濃墨を含ませ描きます。
我等素人に出来るはずがありません(笑)。
その前に同じ筆致、同じ筆勢で真っ直ぐな線を描けませんからな(爆)。
松村景文が「花卉花図屏風」でねむの木を描いてるんですが、
このねむの木の細い枝と幹の描写が見事です。
1-5:
金雲
金箔を貼り雲や霞を表し、場面の区切りや省略用。
金ですから装飾の効果もあり。
洛中洛外図とか、物語物でお馴染みの手抜き(笑)。
今回の例は、
「洛中洛外図屏風」
「両帝図屏風」 狩野探幽
どうもこの手の絵はダメ、何も心に響くものがありません。
1-6:
白描(はくびょう)
墨の線だけで描く事。
滲み、ボカし無し。
今回の例は、
「毘沙門天図像」
「大元帥明王、四天王図像」
「鳥獣戯画断簡」(模本)
墨と言う黒で描きながらも、その名詞はなぜか「白描」、「白」。
マンガの原点とも言えるでしょう。
あの高山寺の「鳥獣戯画」の写本が展示されていましたが、確かに墨でだけしか描いてませんから、
白描ですな。
1-7:
裏箔(うらはく)
絵絹の裏に金箔や銀箔を貼り付け、絹目を通す事により金銀の強い輝きを抑える技法。
今回の例は、
「藤原鎌足像」
「興福寺南円堂曼荼羅」
今回展示された藤原鎌足が室町時代16世紀、興福寺の曼荼羅が南北朝時代14世紀の作。
古いために汚れが多く、裏箔の効果が分かりませんでした。
鈴木其一みたいに幕末の頃の作品ならもっとよく効果が分かったと思います。
1-8:
截金(きりかね)
金箔や銀箔を細い線、三角形、四角形、菱形等に切り、絵画や彫刻に貼る技法。
今回の例は、
「愛染曼荼羅」
「大威徳明王像」
「不動明王立像」 木造彩色
ヴィトンのモノグラムです、ハイ。
同じ。
フランス王家のフルール・ド・リースの模様です。
エライ手間暇掛かる技法で、仏教が当時の日本人にとっての意味と価値が間接的に分かります。
1-9:
繧繝彩色(うんげんさいしき)
こりゃ、グラデーションと言ったら直ぐに分かるでしょう。
色の濃淡の変化をボカしではなく、明るい色から暗い色へ帯状に並べ表す技法。
今回の例は、
「愛染明王像」
「壬生寺地蔵菩薩像」
描いている場所が小さく、オマケにガラスがあるためによく分かりませんでした。
1-10:
まとめ
名前は知らないけど、表現法はしっていたりとか、
自分の知識をまとめ、整理するにはこういう展覧会は最適。
山種美術館でやった金と銀の使い方の展覧会も面白かったからね。
2:
「書く楽しみ」
硯、墨、筆、木胎漆塗の硯箱等。
蒔絵の硯箱は三井記念美術館でもお馴染みですが、こちらの方は使用済みが多い。
それより今回一番驚いたのは、水彩用の筆洗を、何と、白玉で作ってるのがあった(@_@)。
「白玉雲龍文筆洗」
筆洗ですよ、筆洗(@_@)。
あんなもん、水彩やアクリル絵の具で使うヤツは、
プラスチックの小さいバケツか空き缶か、
デザイン用で画材店で売ってる白い陶器で中が三つに仕切られてるやつか、
屋外スケッチ用のビニールの折りたためるヤツが普通でしょう。
それを、それをですよ、白玉を彫ってくり抜いて器にして雲龍の模様まで彫り出す(@_@)。
何なんだ、これ(@_@)。
お金持ちの財力と気ままさ、これに圧倒されました(溜息)。
3:
庭
はい、相変わらずの美しさです。
白玉の筆洗にやられた頭と心を回復するのにも最高です(笑)。
8月の終わりに行きましたが、当然の様にススキの穂が出ていました。
ススキは秋の七草の一つですが、8月の残暑が厳しい時期にもう穂を出します。
季節が進んでいるのは間違いないんですが、まだ蒸暑い、蒸暑過ぎ(笑)。
次に秋の先触れになるのが、クズの花。
花弁の外側は赤紫、内側が純白でチンチョウゲと同じ。
またチンチョウゲ程ではありませんが、このクズも「芳香」族の一つ。
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