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『【特別展】没後60年記念 川合玉堂 ―四季・人々・自然―』

★簡単な紹介

2017年10月28日(土)~12月24日(日)

山種美術館

HP→ http://www.yamatane-museum.jp/exh/2017/kawaigyokudo.html



前口上

山種美術館では2012年以来、5年ぶりの回顧展。
今回一番見たかったのは、「彩雨」(東京国立近代美術館蔵)。
その昔、東京国立近代美術館で見た記憶があったんですが、絵の大きさが記憶と全然違った(@_@)。
小さい絵だと思っていましたが、デカイ(笑)。
どうやら画集では何回も見たけど、近代美術館までは行かなかった様です。
これだから、人の記憶は当てにならん(笑)。


1:
好きな絵師なんで、悪い絵が無い(笑)。
久し振りに実物を見ましたが、「彩雨」以外もデカイ絵が多い(笑)。


2:
川合玉堂の絵には、不染鉄やカラヴァッジョの3D風の飛び出すものは無いんですが、
風景を実際に見ている様な奥行き感があります。

絵の持つ力は全く同じで、力の方向が180度違うだけ。
どちらの向きにしろ我等素人には絶対描けん。

飛び出す絵にはいい意味での「作り物感」があり、カラヴッジョの絵にある劇的な効果は光の使い方だけではなくこの「作り物感」にもある様です。

川合玉堂の絵にはその様な不自然さを徹底的に拭い去っていると解釈すると納得行きます。
「自然を切り取る」とはこういう事ではないでしょうか。

一つ挙げると、
作品番号:43
「雨後山月」
墨絵淡彩
1948年
山種美術館蔵

墨以外色を殆ど使っていません。
いくつかの山並と僅かに重なる稜線。
たなびくのは靄か霧。
中空に上った満月。

単純、簡単な構成ですが、奥行き感、現実感に、目が点、または、圧倒されます。
凄い絵がここにも一枚(@_@)。


3:
全体を見て気付いたのは、

3-1:
川合玉堂は山、または、内陸の絵師。
海辺の絵は殆どないし、展示された数点はどうも冴えません。

3-2:
風景の中に人間か人の「匂い」のする物(→家並等)を入れている絵が多い。
画面の構成や構図から考えると、無くても問題ありません。
「なんで入れたんだ?」と会場をまた一巡りすると分かってきました。
描かれているのは民草、市井の人々。
それも働いている人、生活している人。
散歩している様な人はいません。
見ている人々と同じ普通に暮らしている人で親近感があり、
「温もり」を加えている気がします。

川合玉堂、決して「人間嫌い」ではなかったと思います。


4:
印象に残った絵について。

4-1:
作品番号:8
「瀑布」
彩色
玉堂美術館蔵
1909年

作品番号:17
「宿雪」
彩色
日本芸術院
1934年

色の数を抑え、墨絵に毛が生えた程度。
両方共落ちる水の表現が超絶技巧(@_@)。
落ちる様子だけでなく、音まで聞こえそうです。

4-2:
作品番号:32
「彩雨」
彩色
東京国立近代美術館蔵
1940年

実物も(笑)、いい。
写実的なくすんだ紅葉ですが、本物の紅葉の様に美しい(^o^)。
秋雨に霞すむ大気、雰囲気は80年近く経った東京都心の雰囲気と変わりません(@_@)。
日本の秋の大気を絵絹の上に再現しているんです。
川合玉堂、この絵師も凄い実力の持ち主です、
まぁ当然だけどね(笑)。

作品番号:39
「山雨一過」
彩色
山種美術館蔵
1943年

「彩雨」と対になる初夏の雨後の大気の煌めき(^o^)。
遠景の山々に残る千切れ雲、その白がいいんだなぁ。

4-3:
作品番号:12
「紅白梅」
金地、彩色
玉堂美術館蔵
1919年

尾形光琳の「紅白梅図屏風」に倣った作品。
幹と枝をたらし込みで描写し琳派その物

琳派と違い100年前と新しく状態が物凄く良く、艶やか、良い、良い、良い(^o^)。

4-4:
今回改めて川合玉堂を見ると、記憶に残っていた以上に叙情に満ちていました。

歌川広重の東海道五十三次、名所江戸百景、川合玉堂より10歳若い川瀬巴水の新版画、
この二人の作品と同じ程ではありませんが叙情に満ちています。
同じ系統と言ってもいいでしょう。

好きな理由が分かりました(^o^)。


5:
こんな訳でとても良かった(^o^)。





タグ 川合玉堂 川瀬巴水 歌川広重
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『生誕140年 吉田博展 山と水の風景』 その1

★簡単な紹介

2017年7月8日(土)~8月27日(日)
前期:7月8日(土)~7月30日(日)
後期:8月1日(火)~8月27日(日)

東郷青児記念 損保ジャパンニッポン興亜美術館

HP→http://www.sjnk-museum.org/program/current/4778.html


1:
川瀬巴水と同じく「新版画」に取り組んだ一人。
川瀬巴水と同じく、葛飾北斎歌川広重に匹敵した一人。

川瀬巴水と同じく、美しい、良い、衝撃的(^.^)。


2:
展示は、水彩から始まり、油彩へと続きます。

これが、まぁ、悪くはありません。
作品として突出している物は、残念ながら、特に無し。
「すでに絵は描かれ過ぎている」状態。


2:
ところが、70点程続くと、
突如、
絵が動き出した、輝き出した(@_@)。

視線と心を捉える絵が現れました。

版画です、新版画です。

吉田博の才能が突然、開花、結実しました。

2-1:
作品番号:4-14
『モレーン湖』、油彩
作品番号:4-26
『モレーン湖 米国シリーズ』、木版

作品番号:4-12
『グランドキャニオン』、油彩
作品番号:4-23
『グランドキャニオン 米国シリーズ』、木版

この二組は、どちらも油彩を最初に描き、
それを木版画にしています。
油彩の重たさ、厚さが無くなり、動き出したのが木版画。
空気の動き、光の変化、こう言ったものを感じられるんです。
突然、いつまでも見ていたい魅力に満ちます。

この変化、正に衝撃的(^.^)、(@_@)。
なんで、こんなに変わるんでしょう?
直ぐに分かるのは、木版画は描き込み過ぎていない事。
摺りに80回とかやっていますが、省略しているのは誰が見ても分かります。

でも、質感の違いとかもあるし、よく分からん。

分かるのは、いい(笑)。
心と視線を捉える力と魅力がある、って事。

2-2:
瀬戸内海集、木版画

作品番号:4-50
『光る海』
作品番号:4-51
『帆船 雨後の夕』
作品番号:4-52
『帆船 朝』
作品番号:4-53
『帆船 午前』
作品番号:4-54
『帆船 午後』
作品番号:4-55
『帆船 霧』
作品番号:4-56
『帆船 夕』
作品番号:4-57
『帆船 夜』

凪の瀬戸内海と帆船を描いた一連。
潮風、船体に当る柔らかな波、空気の質感が伝わる、伝わる(^.^)、(@_@)。
故ダイアナ妃が『光る海』を執務室に掛けたのも分かります。
穏やかこの上無し。

素晴らしい(^.^)。

こういう自然は日本にしかなく、日本でしか生まれないんじゃないでしょうか?

2-3:
作品番号:4-85
『渓流』

これまた、日本でしか生まれないんだろうなぁ。
流れに透けて見える岩を描くのは、自然と距離を置かない日本文化故でしょう。
ロッセリーニの映画に『無防備都市』なんてのがあり、
原題が”Roma citta aperta”
「開かれた都市ローマ」の意。
城門を開ける、降伏の意があります。
ヨーロッパの都市と言うのは、城壁で囲い外敵と肉食獣から防いでいました。
武力で攻めて来る蛮族はいるし、異邦人は未知のウィルス病を持ってくる恐れはあるし、狼は人間を食べる。
だから、自然に対し距離を置くのは当然。
そうなると、自然に近付かない、細かい事を見ない、感じない、関心を持ちません。

まぁ、そう言っても、ジョン・エヴァレット・ミレイの『オフィーリア』は、ちゃんと流れを描いてましたナ(笑)。
1851年から1852年にかけて描かれたので、かなり自然に対しヨーロッパ人が強くなったから描けた、
とイヂワルな考え方も出来ますが(笑)。

日本の絵師、工芸家、陶芸家の波の表現の巧さは自然と添い寝している日本の自然観のためとしか思えません。
国土が狭く、海に近いだけでなく、河川にも近いので、やはり水の流れは身近な存在です。

『渓流』で泡立つ水は広重を思い起こさせますが、その上、小さな落差に落ちる流れに透けて見える岩の表現と質感は、
吉田博独自であり、この上なく見事で素晴らしい。

作品番号:4-44
『黒部川 日本アルプス十二題』
こちらは、『渓流』と違い、流れから離れた作。
黒部川の急流、流れの速さが大変良く分かります。
これも、見事です。


3:
と、まぁ、自然を描いたのは中々の秀作揃いなんですが、
どうも、日本の都会を描いた作品には、キレが無い、甘い。
川瀬巴水が描いた魅力に匹敵するものが無いですな。
『東京拾二題』は、全体に暗く、『瀬戸内海集』の持つ力がありません。
シティボーイではなく、自然児、だからと捉えて間違いないはずです。
都会が好きじゃなかったでしょう。

その代り、海外の都会を描いた
作品番号:4-32
『ルガノ町 欧州シリーズ』
は、明らかに気合いの入り方が違います。
やはり、日本とは違う異国情緒が大いに刺激になったと分かります。


4:
まとめ

吉田博の木版画は、輪郭線とボカシで水彩風であり、水彩の影響が多い。
若い頃から水彩に親しみ、その後、油彩もやります。
両方の質感と特徴を十分心得ていたと思います。
木版画の墨線ではなく、同系色を使った輪郭線は水彩の特徴以外の何物でもありません。
水彩をやった事のある方なら何回も経験されたことがあると思いますが、
乾いた紙の上に色を塗ると、色と紙の境目が非常にクッキリ残ります。
この境目が意外と邪魔で、境目をボカすには紙を濡らす必要があります。
この時、紙の乾き具合が分かるのが難しく、私CYPRESSの場合、とうとう分かりませんでした(笑)。
そう、下手糞だったです(笑)。
風景画だと、雲なんか境目をボカさないと、柔らかな質感を表現出来ません。

同系色を使った輪郭線で物の形をハッキリ表し、強調、全体に力と締りを与える。
ボカシを色の境目やグラデーションに使い、自然な質感を与え、更に全体に穏やかな雰囲気を漂わせる。
素晴らしい。

更に、水彩表現を生み出すための摺りの数がとんでもない(@_@)。
作品の解説によると、
作品番号:5-32
『東照宮』
で86回。
作品番号:5-33
『陽明門』
で約90回。
葛飾北斎の『凱風快晴』で7回、川瀬巴水の一例で27回、
病気です(笑)。

まぁ、我等素人には水彩も描けんのだから、こんな木版画も摺れるはずありません(笑)。


5:
全181点の内、66点が展示替えされますので、
後期展も行きます。






タグ 吉田博 川瀬巴水 葛飾北斎 歌川広重 ジョン・エヴァレット・ミレイ ロッセリーニ





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『博物館に初もうで』と『松林図屏風』

★簡単な紹介
2015年1月2日(金)~1月12日(月、祝日)
東京国立博物館
HP→http://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=5&id=7633

本年第一弾の美術品巡り、東京国立博物館『博物館に初もうで』へ行ってきました。
入場料はHPだと分かりにくいんですが、
何と、
大人¥620
です。
特別展でないので、安い!(^^)!。


1:
初日2日(金)の午前中に何とか間に合いました。
いつもの様に上野駅公園口から出て横断歩道を渡り、動物園交差点(笑)で右折すると、
東京国立博物館の巨大な姿。
そして、私が嫌いな群衆(笑)。
え~、もうこんなに並んでるの(涙)、
とガッカリし、近付いて細かいところが見えるてくると、
本館前でやってる太神楽を見物してる人でした(笑)。

それでも入場券購入待ち行列は在りましたが、短く、5分程並んで買えました。
それも¥620です(笑)。


2:
国宝「松林図屏風」
長谷川等伯
(参考画像 東京国立博物館のHPから 右隻だけ→http://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=dtl&colid=A10471)
今回のお目当てへ。
会場は御存じの通り日本最大級の大きさですから、来場者は暇人が多いらしく(笑)、
多かったですが気落ちする程の混み具合ではありませんでした。

それでも今回の目玉ですから、一番人気で人出が途絶える事がありませんでした。

実物を見るのは今回が初めて。
1500年代の絵で御年450歳にはなってるのに、恐ろしく保存状態がいい。
これにまず驚きました(@_@)。

全体に漂う静謐さと想像力を刺激してやまない奥行き感、立体感、
素晴らしい!(^^)!。
見ていて飽きません。
開高健先生がよく書いた名品の条件である「押し付けがましさが無い」です。

この木立ちの奥に何が在るんだろう、
この靄が晴れると何が見えるんだろう、
黒澤明の『羅生門』と同じく人の心の怪しさ、信頼出来ない事を表してるのか、
等々、いくらでも想像出来ます。

こりゃ国宝になるはずです。

この絵、花押は押してあるんですが、落款が書いてありません。

さて、気になるのが松の幹が少々真っ直ぐ過ぎる点。
特に右隻の中央、手前の松。
梢の描写がかなり写実描写なので杉並みの真っ直ぐ幹が目立ちます。
単純化してる可能性が大きいですが、何か意図がある可能性も。
どうも、分かりません(笑)。

次回見た時にまた考えてみましょう。

もう一つ気になるのは古い絵なので、汚れは避けようもなく、
薄墨なのか汚れなのか分からない部分が在ります。
出来た時は全体的にもっと明るかったのではないでしょか?

まぁ、とにかく、こんな事を考えなくてもいつまでも見ていたい絵です。


3:
『雪景山水図屏風』
狩野永祥
京狩野(きょうがのう)の十代目だそうです(1810~1886)
幕末から明治初めの絵師ですな。

題名の通り雪景色で、銀箔かプラチナ箔で覆った様な全体にキレイなベージュになってます。
これは紙の色なのか、下地として塗った顔料の色なのか、不明。
キレイな色と雰囲気のいい絵です。


4:
重要文化財『西湖春景銭塘観潮図屏風』
池大雅
(参考、画像とこの絵について↓
http://www.emuseum.jp/detail/100270/000/000?mode=simple&d_lang=ja&s_lang=ja&word=%E6%B1%A0%E5%A4%A7%E9%9B%85&class=&title=&c_e=®ion=&era=¢ury=&cptype=&owner=&pos=1&num=4)

この絵、凄いヨ(笑)。
全体にマンガっぽい描写で特に左隻の木々の描写がマジックやマーカーみたいな筆致なんで、
馬鹿にしてると足を掬われます、間違いなく(笑)。
重要文化財になっているんですから、素人が描ける様な絵であるはずありません。

『松林図屏風』の様なある種の緊張感が在る絵と違い軽い雰囲気を漂わせている絵なんです。
この「軽い雰囲気」に騙されると損しますよ、諸君(笑)。

さて、このマジック風筆致、全くムラが在りません。
一つ二つならともかく、これだけの量をムラなく描けるのですから並の技量ではありません。
隅々まで描写を一つづつ見て行くとマジック風筆致以外でも長い線描も途切れが無く、また筆圧も変わってません。

長谷川等伯と変わらぬ技量の持ち主ですよ、池大雅!(^^)!。
しかも軽い雰囲気を漂わせているんです。
凄い絵師です、池大雅

この『西湖春景銭塘観潮図屏風』のおかげで池大雅が好きになりました!(^^)!。


5:
『江戸名所百景 霞かせき』
歌川広重
(参考画像 国立国会図書館→http://www.ndl.go.jp/landmarks/details/detail002.html)

この絵がこの展覧会で一番心を動かされました。
広重と北斎の絵は構図が我等凡人には予想もつかん絵を描くんですが、この絵もその一枚。
正に「ぶっ飛んだ」絵です。
北斎と広重の浮世絵はマンガ風が多いんですが、その「マンガ風」に騙されると、これも、損します(笑)。

凧を主題にした絵、他に在るでしょうか?
凧なんかを絵の主題にしようと考えるでしょうか?
この絵の主題は、画面天辺中央の「魚」と書かれた凧です。
正確に言うと凧に付いている2本の尻尾です。
この2本の細い糸が絵に完璧な安定感を与え、絵を完成させています。

こんな構図の絵、歴史上、他に存在したでしょか?

素晴らしい、実に素晴らしい絵です。

オマケにこの糸が実に細く摺られています。
版木が山桜、木ですよ、木。
デューラーの銅版画ならこれ位摺れそうですが、浮世絵は木ですからね。
よく彫り残した部分が潰れたり崩れなかったもんです。
彫師と摺師の実力が凄いんだね。
『ボストン美術館浮世絵名品展 北斎』で見た『凱風快晴』の墨の輪郭線の細さに驚きましたが、
今回もやられました(笑)。

他に書く必要もないんですが一つ書けば、
画面中央、中景の凧は明らかに富士山を象徴してます。

言葉を奪われた一枚です。

圧倒的な力を持った絵です。

素晴らしい!(^^)!。


6:
黒田記念館
重要文化財『湖畔』
重要文化財『智・感・情』
重要文化財『舞妓』
『読書』
黒田清輝筆
(画像はHPに在り→http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1703)

ここは入場料無料(^.^)。
上の4作品の圧倒的魅力には全く敵いませんでした(涙)。




タグ 長谷川等伯 狩野永祥 池大雅 歌川広重 東京国立博物館




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プロフィール

CYPRESS

Author:CYPRESS
最近好きな女優は杉村春子と中谷美紀。
好きな監督は黒澤明と張藝謀。
気になる監督は堤幸彦。
山田孝之の実力が分かってきました。

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