『美の巨人たち フィンセント・ファン・ゴッホ 「星月夜」』
2105年6月6日(土)
TV東京系
放送分HP→http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/150606/index.html
図版Wikiから→http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cd/VanGogh-starry_night.jpg
1:
さて、この絵、20年位前に上野で見ました。
調べてみると、
MoMa展第一回
上野の森美術館
1993年
の事でした。
この時、アンリ・ルソーの代表作『眠れるジプシー女』も来てましたなぁ(遠い目)。
有名な絵で黒山の人だかりでしたが、画集で見た通り、静謐さと不思議さに満ちた中々の絵でした。
そして、『星月夜』の前も黒山の人だかり。
それでも暫くすると人だかりが薄れ、近付き隅から隅まで見て調べると、
「?」。
「あれ?」
よく見るとあちこちにキャンバスの地が見え、塗り残しが(@_@)。
下塗りも無く、純粋なキャンバスの繊維の目がハッキリ見える(@_@)。
な、何だ、これ?
1980年頃からゴッホの絵が来ると欠かさず見に行ってましたが、塗り残しがある作品は見たことなし。
色の塊で配置を考えたりしないで、一気に描きあげたのは明らかでした。
何だか手抜きみたいで、急速にこの絵に対する熱が冷めて行ったのを今でもハッキリ覚えています。
さて、今回の放送でもアップの連続で塗り残しが記憶通り、ある、ある、ある(笑)。
ゴッホの他の絵と違う『星月夜』、どんな風に放送されるか興味深く観ました。
2:
筑波大学の芸術系、齊藤泰嘉教授は星空の描写は北斎の『神奈川沖浪裏』から来ているのではないかと指摘しています。
(『神奈川沖浪裏』
参考Wiki→http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0a/The_Great_Wave_off_Kanagawa.jpg)
2-1:
この『神奈川沖浪裏』の画面構成は「規矩の法」だけでなく、「三遠法」が使われているとも齊藤泰嘉先生は指摘。
「三遠法」文字通り下記の3種類の遠近法から成っています
深遠→手前の高い位置(山や波)から下を覗きこむ視点
高遠→下から上を見上げる視点
平遠→広く平らな場所を見る
更に画面中央(手前の波と奥の富士山)は西洋式の線遠近法が使われ、
三角形の相似形に組み合わせになり画面に奥行を与えていると齊藤先生は指摘しています。
そして、ゴッホの『星月夜』も同じ構成になっていると齊藤先生は指摘しています。
平遠法→画面中央から右側寄り
神奈川沖浪裏→波の底と船
星月夜→村の風景
深遠法→画面左側
神奈川沖浪裏→船の舳先
星月夜→糸杉の奥の大地
高遠法→画面左側
神奈川沖浪裏→大波
星月夜→糸杉と一面の夜空
線遠近法→画面中央付近
神奈川沖浪裏→手前の小波と奥の富士山
星月夜→小さい方の糸杉と奥の教会の尖塔
2-2:
瞬く星の数は「11」個。
この「11」と言う数は、
旧約聖書創世記、第三七章九節から来てるらしい。
>ヨセフ叉一の夢をみて之をその兄弟に述べていひけるは我また夢をみたるに
日と月と十一の星われを拝せりと
太陽と月はヨセフの両親、11の星は兄弟たちを表し、
兄弟たちから虐げられていたヨセフが将来彼らを救うという予知夢なんだとか。
つまり、ゴッホは創世記のこの部分を描こうとしてのではないか、
宗教画なのではないか、
とこの番組は解釈してます。
説得力がありますね。
2-3:
造形家の青木世一氏が『星月夜』の立体模型を作り、
『神奈川沖浪裏』の波を加えると、
見事に夜空と波が一致します(@_@)。
違和感皆無(@_@)。
2-4:
もう一つこの番組では解釈していて、それが次の事。
糸杉は西洋では墓地に植えられる事が多く死を象徴している、
(私も自己紹介の記事でこの件を書いています→http://cypresshushizen.blog.fc2.com/blog-category-12.html)
そして死に引かれていく自分をこの絵でゴッホは繋ぎとめようとしていたのではないか、
月と11の星に願いを込めて。
ゴッホがこの『星月夜』を描いたのは、自分の精神状態に不安になりサン・ポール・ド・モーゾール修道院に入院していた時ですから、
この意見も説得力があります。
3:
改めて、ガッカリする事無く(笑)、落ち着いて見ると、
3-1:
また齊藤先生の解釈と青木氏の実証のおかげで『星月夜』の魅力や実力が分かってきました。
また、齊藤先生のおかげでゴッホの描写力と構成力にも感心しました。
ゴッホが『星月夜』を描いた時、北斎の『神奈川沖浪裏』を参考にしたか、手元に在ったか、分かりませんが、
塗り残しの多さから急いで一気に描きあげたのは間違いありません。
だとすると、参考にしたとしても手元に置いて見比べながら描かなかったと考える方が妥当でしょう。
大波、小波の形だけでなく、三遠法の構図も含め全てを覚えていて、まるで下描きがあるの様に描いたと考えても間違ってないでしょう。
ゴッホの描写力を考えると、実は簡単な事だったのではないでしょか?
3-2:
また今回気付いたのは、この『星月夜』、少々バランスが崩れています。
夜空が強過ぎ、地面が空を支え切れていません。
自分の精神状態の不安を表す意図的なことなのか、
それとも絵のバランスと取ろうにも取れない精神状態だったのか、
今となっては謎です。
ゴッホも模写した広重の『大はしあたけの夕立』の不安定の影響もあるかもしれません。
(参考→http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1312294)
3-3:
この放送のおかげで興味が湧いてきて、また見たくなりました。
でも、マンハッタンは熱海より遠い(笑)。
オマケにこの美術館、入場料がエラく高い。
何と、$25だぜ、\2,500以上(@_@)。
(参考→http://www.moma.org/visit/infoplans/japanese_plan#generalinfo_ja)
4:
今回番組のプレゼントが『星月夜』の収蔵元ニューヨーク近代美術館で売ってる『星月夜』柄の折り畳み傘。
この傘、日本でも売ってます。
東京は表参道のMoMA DESIGN STORE。
NY近代美術館の初の海外出店だとか。
通販もあり。
興味がある方はどうぞ。
HP→https://www.momastore.jp/momastore/products/detail/product_id/1443/
タグ ゴッホ 星月夜 北斎 神奈川沖浪裏 広重 大はしあたけの夕立 三遠法 規矩の法
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