★簡単な紹介
2016年3月23日(水)~5月15日(日)
東京近代美術館
東京近代美術館のHP→
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/yasudayukihiko/特設HP→
http://yukihiko2016.jp/1:
閉会まで1週間となり、急いで竹橋まで行ってきました。
連休後半、前売り券無しで大丈夫かと不安でしたが、上野の伊藤若冲にお客さんを取られた様で(笑)、
行列無し、待ち時間無しで入場出来ました。
2:
「卑弥呼」とか「飛鳥の春の額田王」くらいしか知りませんが、どんなもんかと見ると…
ん~、なんか省略と単純化の極みで、どの絵ものっぺりしていて退屈。
それでも横山大観を描いた
作品番号077:大観先生像
作品番号085:大観先生
は良かった。
他の大部分の人物画と違い蒸留度が低く、この横山大観も人間には変わりなく、
欠点も嫌な面も弱い面も持ち合わせてるんだな、と分かる人間臭い絵でした。
同時に、両手の指を長めに誇張し画才も示しています。
3:
まぁ、こんなもんかと少々ガッカリしながら
安田靫彦展を見た人は無料で見られる
同美術館2階から4階でやってる
『MOMATコレクション 特集「晴らんまんの日本画まつり」』
を見に行きました。
2016年3月8日(火)~5月15日(日)
HP→
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20160308/作品リスト→
http://www.momat.go.jp/am/permanent20160308_list27-4/驚きました(@_@)。
こっちの方が遙かに良かった。
文字通りの粒揃いの作品でした。
主な日本の絵師は、
鏑木清方、菱田春草、小林古径、速水御舟、萬鉄五郎、村山槐多、荻原守衛、
中村彝、高村光太郎、梅原龍三郎、藤島武二、今村紫紅、奥村土牛、小倉遊亀、下村観山、
などなど(@_@)。
でも荻原守衛と高村光太郎は彫刻家だけど(笑)。
その中でも印象的だったのは、、
岸田劉生「道路と土手と塀」(切通之写生)
岸田劉生「麗子肖像」(麗子五歳之像)
佐伯祐三「ガス灯と広告」
和田三造「南風」
川合玉堂「行く春」
安井曾太郎「金蓉」
北蓮造「提督の最後」
田村孝之介「佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す」
中村研一「北九州上空野辺軍曹機の体当りでB29二機を撃墜す」
岡本太郎「燃える人」
岡本太郎「夜明け」
岡本太郎「遊ぶ」
岡本太郎「反世界」
とにかく
安田靫彦の単純化の極み、ノッペリした絵ばかりでしたから
染み入る染み入る(笑)。
ちょっと盛り過ぎ評価になるけど(笑)。
見事なのは、これだけ量が多く、画風が違う物ばかりなのに、ゴチャゴチャ感が無く、
見ていても疲れず、スッキリとしています。
画風の違いが逆に気分転換になり、数多く見ても疲れず次は何だと関心を高めます。
学芸員の方々の趣味や美的センス、感性の良さが分かり、感心しました。
3-1:
岸田劉生、
佐伯祐三は、いいね(笑)。
和田三造の「南風」は有名ですが、ここ東京近代美術館にあるとは知りませんでした。
厚塗りで筆のタッチが荒々しく残り、
安田靫彦のノッペリを見た後だったんで、円空の木彫仏像の様で良かった。
安井曾太郎の「金蓉」は代表作だし非常に有名。
これもここ近代美術館の所蔵品とは知りませんでした(笑)。
モデルは小田切峰子嬢で、各部を立体的に捉え描写。
まぁ西欧的表現です。
表わしたいのは小田切さんで、小田切さん以外の背景は写実表現ではありません。
1934年の作で、絵具のひび割れが目立ち始め修復が必要になって来てますね。
川合玉堂はどれも好きなんで、私CYPRESSが書くのはヨイショ記事しかありません(笑)。
この大きな屏風「行く春」は題名の通り時の流れを描いているので、桜の花びらが地面や岩を覆う美しさは敢て描いていませんね。
3-2:
驚いたのは戦争絵画まであった事。
更に驚いたのは、
毎日グラフ1967年11月3日号臨時増刊「太平洋戦争名画集 日本絵画史の一断面 アメリカ国防総省が押収した記録画」
で見て以来ほぼ50年振りに見たこと(@_@)。
ただ、「提督の最後」は間違い無く載っていたと思いますが、他の2点は、50年近く前なんでビミョー(溜息)。
北蓮造「提督の最後」
田村孝之介「佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す」
中村研一「北九州上空野辺軍曹機の体当りでB29二機を撃墜す」
この3作はハッキリと記憶に残っていて、記憶通りの絵でした。
「提督の最後」
ミッドウェー海戦での空母飛龍上で山口多聞少将第二航空戦隊司令官、提督、が水杯を受け、
加来止男(=かくとめお)大佐、飛龍艦長の方は降ろされた軍艦旗を受け取ろうとしている場面を絵にしています。
山口提督と加来艦長の写真の様な描写に、小学生だった私CYPRESSはビックリしたのを覚えてます。
今回改めて見ると全体に西欧の写実表現ですが、写真風に描き込んであるのは山口提督と加来艦長の顔だけです。
表情に注目すると、意外や無表情。
ミッドウェー海戦と言えば、作戦は失敗するし、多くの飛行機と船は失うし、多くの兵も失うし、とボコボコにされましたから、
しかも会社なら社長、重役ですから、どんな顔付きになるのか、興味を持って見ると、あらま、無表情。
集中し緊張感を持って仕事をして、失敗したんですから、少なくとも疲労感、徒労感があって当然ですが、無表情。
武人の最高位になる程の人物ですから、強い心を持っていて当然なので、二人の剛毅さを表したのか、
それとも描きたい事があっても、時節柄、控えたのか、
不明。
「佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す」
戦闘だけでなく、補給を絶たれ餓死と病死で全滅状態になったガダナルカナル島での一場面。
「挺身」とは「捨て身」の意ですから、戦死覚悟の志願。
題材をネットで調べてみましたが詳しい事は不明。
レンブラントは当時から知っていたと思いますが、斜光のレンブラント光線は知りませんでした。
オマケに17世紀オランダやフランドルの絵画で樹木や植物を茶褐色で描いているのも意識していませんでした。
熱帯降雨林のジャングルの中で皇軍を17世紀オランダ絵画風に描くと、この絵になります。
更に感慨深いのは、私の掛かり付け医のお父さんが軍医少尉殿としてこの島へ派遣され、幸運にも生還した事。
軍医少尉殿は医師としてガダルカナル島へ行ったのに医療品も無くなり、多くの兵士を救えず、無力感に苛まれたかもしれません。
逆に多くの死を見過ぎ何の感興も起こらず、飢えと餓死の恐怖で全くの他人事だったかもしれません。
更に玉砕するのが分かっている挺身隊を見送った事があったかもしれませんが、どう思い、感じたのでしょうか?
「北九州上空野辺軍曹機の体当りでB29二機を撃墜す」
この題材は有名な様で直ぐに分かりました。
昭和19年8月20日、第12飛行師団に所属していた野辺重夫軍曹は屠龍で空襲終了後のB29に機銃攻撃を行うも効果無し。
そのために体当り攻撃を敢行、一機に直撃、その破片が後続機に当たり、両機墜落。
「提督の最後」や「佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す」と違い、大空と墜落する飛行機3機を描いているのでキレイです。
その場にいるのと遠く離れているのとでは、これだけ違うんです。
太平洋戦争での日本の芸術家の戦争責任云々と言う議論がありますが、
仕事として芸術をやれば責任問題は避けられないもの。
商業芸術には何も戦意高揚と言う事だけでなく、依頼主や商品等、自分の意思とは関係無く加害者に一人になる可能性が常にあります。
問題はやってしまった後。
どう責任をとるかでしょう。
向井潤吉も戦争絵画を描いたそうです。
その後、敗戦直後から古い、伝統的自然発生的農家を描き始めました。
どうやら向井自身明言してない様ですが、外地で行方不明になったり戦死したりした元皇軍兵の方々の代わりに、
自分の目で彼等のために農家を見、描き、漁村を見、描き、鎮魂していたのではないでしょうか?
亡くなった兵士の代わりに故郷を見、描いたのではないでしょうか?
芸術や絵画ではなく、工業デザインのこう言った危険性を書いた名著にヴィクター・パパネックの『生きのびるためのデザイン』があります。
大昔に読み、現在手元に無いので中古を発見、通販で頼みました。
3-3:
岡本太郎「燃える人」
「夜明け」
「遊ぶ」
「反世界」
世界的に有名なあの方、
岡本太郎の本物を初めて見ました(^_^;)。
やはり、機会があれば、どんな作品でも本物、実物を見るべきです。
驚きました(@_@)。
とても素晴らしい(^.^)。
抽象絵画で初めて好きになりました(^.^)。
結構手早く描いてるだけの絵、あの筆致から強いだけの絵だと思いましたが、
変な表現ですが、絵です、絵になってます(笑)。
筆致と色使いから勢いだけの絵に、一見、見えるんですが、構図、色使い、構成をよく考え、絵になってるんですなぁ(溜息)。
使ってる色を見ると、色彩感覚に当然ながら優れていて、騒々しくなく訴える力は強いですが、まとまり落ち着いてます。
例えば、黄色と赤は相性が悪く隣り合うと何やらアクが強くなり、目に気持ち良くない。
ところが岡本太郎の絵だと、黄色と赤を隣合せても厭らしさがありません。
全体に筆致と物が多いんですが、これも無駄を省きエラくまとまってます。
写実表現なら実在するものを描き割と簡単ですが、
こういう抽象表現になると物に対する感覚、絵を構成するための空間感覚、立体感覚等が重要になります。
更に岡本太郎は芸術家の命、他人とは違う個性まで加えてます。
抽象化と言うより、「岡本太郎化」になっているんです。
さて、岡本太郎、絵を描く時、どうしていたのでしょう?
考え、習作を幾つか作り効果の違いを調べながら作ったのか?
それとも、全てが感覚的に分かり、頭の中で完成形を作り、モーツァルトの様に一気に描いたのか?
どっちだったのでしょう?
4:
まとめ
安田靫彦は好みに合いませんでしたが、
東京近代美術館の所蔵品にはビックリしました。
やはり、実物、本物は一度は見るべきなのを改めて痛感しました。
岡本太郎に一目惚れするとはねぇ…(笑)。
タグ
安田靫彦 岡本太郎
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テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。
ジャンル : 学問・文化・芸術